ふんわりしてるけど、もっちりしてる。
こんなパンはお店でも売っていない。
これは、実際にレッスンで試食中の生徒さんのことばです。
冷蔵発酵は『冷蔵庫でパンをじっくり熟成させる』パン作りです。
1日目に捏ねて、一次発酵を『一晩中』行うのです。
そして、2日目に焼き上げまで行います。
なんで、そんなにパン作りに時間をかけるの?
冷蔵発酵は、低温長時間発酵やオーバーナイト法とも言われます。
それぞれの言葉でニュアンスは違いますが、家庭でのパン作りではほぼ同じ意味のものと考えて問題ないでしょう。
パン屋さんで『○○時間長時間発酵』という文字を見たことがありますか?
長時間発酵は、手作りパンを100倍にも美味しくする秘密があるのです。
翌々日もしっとり柔らかいパンが焼きたいあなたへ!小麦の芯まで潤おうパン生地はしっとり長持ち
小麦粉はサラサラとしていますが、お米のように小さい粒が集まってできています。
お米を炊く時に、しばらくお水に浸けておく方も多いですよね。
粒の中心まで水がしみこむには時間がかかるのです。
そして、お米を水に浸けてから炊く白ご飯はピカピカのつやっつや。
これは、小麦粉も同じです。
パンを作る時、まずはじめに小麦粉と水などの材料をまぜます。
そこから、2時間でできあがるパンもあります。
一方で、長時間発酵させて10時間以上も熟成させるパン生地は、
水分を多く吸い込んでいてプルプルしています。
この2つのパン生地をオーブンで焼けば、
その違いは歴然です。
そして、家庭で長時間発酵をさせるために使うのが冷蔵庫です。
野菜室か冷蔵室を使うかは、季節によっても違います。
低い温度でイーストの働きをゆっくりさせてあげることで、
家庭での長時間発酵をうまくおこなっていくのが、冷蔵発酵のポイントです。
イーストは極少なく?家庭での冷蔵発酵の『成功の鍵』はイーストの量
微量のイーストでじっくり熟成。
このようなパン作りは、今や多くの方が行っていますね。
さて、時短にするために
イーストが過剰に多く入ったレシピもあります。
家庭での生活は日々忙しいので、
『時短』であることもうれしいですよね。
でも、、イーストをたくさん使うパンの風味はどうでしょうか?
◎翌日には固くなる
◎焼きたては良いけど、冷めると風味がわるい
◎イースト臭がする
これらは私自身も感じますし、実際に生徒さんからも相談を受けることがあります。
イーストの量が多いと、イースト臭は残りやすくなります。
そして、発酵も加速されてどんどん進みます。
短時間でパンを焼き上げると、発酵でうまれる旨みや良い香りも
うすくなってしまうのです。
味気のない、膨らんだだけのパン。
イーストの量は、パンの味を決める超重要ポイントです。
翌日にすぐ固くなってしまうパンは、配合自体に問題があることも多い。
経験上、私はそう感じています。
そこで、言われるようになったのが『微量のイースト』で作るパン作りです。
10年以上前?流行りましたよね。
私が冷蔵発酵のパン作りを研究し始めてから、
0.1g単位でイーストの量を変えてパンの焼き比べを行っていました。
(超マニアック(笑))
その中で多くの発見がありました。
ふんわりパンを焼きたい場合、極少量のイーストだとうまくできない。
この理由は、様々な論文や本を調べる中でわかりました。
イーストは冷蔵庫に入れてしまうと、だんだんと働きがわるくなってしまうのです。
だからこそ、どんな配合のパンでもイーストの量を減らして良いというのはちょっと違うと思います。
冷蔵発酵を成功させるためには、パン生地の配合に合わせて
イースト量を決めることが鍵になってきます。
私がレッスンでお伝えしているのは、
小麦粉100gに対してイースト量が0.3g~0.8gになるパン作りです。
極少量ではないかな?
イースト臭を極力抑えつつ、家庭での作りやすさとのバランスを考えてだした結果です。
冷蔵発酵のパン作りは今も研究中です。
イーストの量は、いつも悩まされる課題ですね。
時間を有効活用!仕事があってもパンが焼ける!
私が冷蔵発酵をはじめたきっかけは『育児でパンを焼く時間がなかった』ことです。
出産後、いつ泣くかわからない赤ちゃんのお世話をしていると
『今、オーブンの中に入れたい!』と思ってもできません(泣)
じゃあ、時短・簡単パンを作れば?
それは、できませんでした。
私は『発酵でうまみを作るパン作り』を続けてきました。
先生の教えでもあります。
イースト量を多くし、短時間で焼き上げるパンは私のモットーに反するのです。
そこで、はじめたのが『冷蔵発酵』です。
1日目に捏ねて、冷蔵庫へ入れておきます。
翌日、スキマ時間を見つけて焼き上げまでを行いました。
このやり方なら、パートで仕事をはじめてからも
パン作りを続けることができたのです。
プレゼントすると感激されます!だって翌日までふわふわだから
『これ、本当につくったの?』
『なんで、こんなにもちもちなんだろう?何かいれてるでしょう!』
そんな風に言われるようになったのも、
冷蔵発酵のパン作りをはじめてからです。
イーストで作る長時間発酵のパンは『天然酵母』でつくるものとは全く違います。
イーストはパン酵母の超選抜メンバーです。
とにかく発酵するのが得意。
だからこそイースト量を少なくしても、
ふんわりと軽く、やわらかいパンを作ることができます。
そして、良くも悪くもイーストは『風味が弱い』のです。
酵母自体に強い味がしないので、
小麦粉やバターなどの他の材料の風味を活かしたパン作りができるようになります。
冷蔵発酵や低温長時間発酵のパン作りというと、
発酵でうまみを引き出すバケットやカンパーニュなどのハード系のレシピがとても多くあります。
しかし、私が冷蔵発酵で作りたいのは、ハード系のパンではありません。
(たまに登場しますが、、、(^^))
イーストの強みを活かせば、
長時間発酵で最高のふわふわパンを作ることができます。
ふんわりと膨らんだ『しっとりもちもち』のパン。
イーストの冷蔵発酵でつくる菓子パンや食パン、バターロール、、、
極上のしっとり感とやさしい発酵の風味。
そんなパン作りを、私は目指しています。