真っ黒なブラックココアのパンを作ってみたいあなたへ。
ブラックココアのレシピを探しますか?
それとも、、普通のココアパウダーのレシピをアレンジしてみますか?
そもそも、ブラックココアと普通のココアパウダーの違いは色だけなのでしょうか。
ココアの成分が発酵に影響してしまったら、
失敗してしまうかもしれません。
知っておきたい。
パン作りでのブラックココアと普通のココアパウダーの違い。
含まれる成分に注目!実際の検証結果をもとに、くわしく解説していきたいと思います。
目次
- パン作りに影響する!?ココアパウダーとブラックココアパウダーの成分
- ココアに含まれる油分はパンのグルテンをできにくくする
- ブラックココアの塩の量に要注意!塩はパン生地の弾力を強くする
- パンの配合で超重要!ココアパウダーとブラックココアの吸水量の違い
- 【検証①】ブラックココアパウダーはアルカリ性!パン生地の発酵が遅い理由とは?
- 【検証②】ブラックココアパウダーのパン生地は固くなる?
- 【検証③】ココアパウダーよりブラックココアパウダーの方が最終発酵も遅い!
- 【検証④】ココアパウダーとブラックココアパウダーでパンの膨らみに差はあるのか?
- 【検証⑤】ブラックココアパウダーのパン生地はココアの味がしない!?
- ◎まとめ◎ブラックココアパウダーとココアパウダーは同じではない!パン作りで代用するときには絶対にレシピの調整が必要
パン作りに影響する!?ココアパウダーとブラックココアパウダーの成分
ココアパウダーとブラックココアパウダーの原料がカカオ豆です。
やっぱり色が違うだけ?
商品の表示を見てみましょう。
『パン作り』にココアを使うということを前提に考えると、
注目すべきポイントは2つです。
ひとつめは油分であるココアバターです。
◎ココアパウダー⇒ココアバター22~24%
◎ブラックココアパウダー⇒ココアバター10~12%
おー、油分は約2倍の差がありますね。
そして、もうひとつが食塩の量です。
◎ココアパウダー⇒食塩相当量0.03g/100g
◎ブラックココアパウダー⇒食塩相当量5.5g/100g
なんと!ブラックココアパウダーには100gあたり5.5gの食塩が含まれています。
これはかなりの衝撃です(*_*)
塩の量はパンのグルテンができる過程に大きく関係してきます。
ココアの使用量にもよりますが、ここは要注意ポイントですね。
ココアに含まれる油分はパンのグルテンをできにくくする
バターなどの油脂が配合されたパンのレシピは非常に多くあります。
それは味だけ?
そんなことはありませんね。
油脂はパン生地を柔らかくし、伸びの良いパン生地に変身させます。
すると、オーブンの中でもグーンと伸びて大きく膨らみます。
ふわふわのパンのできあがりですね。
油脂はパン作りに欠かせない材料なのです。
ですが、油脂にはパンの骨格をつくるグルテンが作られるのを阻害する働きがあります。
そのため、多くのパンのレシピでは、
捏ねてしばらく経ってからバターを練りこんでいきます。
ちなみに最初からバターを混ぜてしまうと、まったく別もののパンになってしまいます。
こちらのブログに検証結果がありますので、参考にしてみてくださいね。
【比較/検証!】パン作りのバターは後入れ?最初から?味や膨らみに影響するのか試しました!
さて、ココアに含まれるココアバター。
これも油脂です。
パンはミクロの世界で、いろいろな成分が関わりあって作られていきます。
特に油脂がもつ、グルテンに対する働きは強いな、、と私は感じています。
一般的なココアパウダーの配合量であっても、パン生地への影響は十分にあると思います。
ココアパウダーとブラックココアパウダーの油分の量はかなり違いましたね。
ブラックココアパウダーのほうが油脂の量が少ないのです。
仕上がりのパンにどれくらいの影響があるかは、
レシピごとに作ってみないとわかりません。
ただ、油脂の量が違うということは覚えておいて損はないと思います。
ブラックココアの塩の量に要注意!塩はパン生地の弾力を強くする
ブラックココアの塩の量!
驚きましたね~。まさか100gあたり5.5gとは。
もし、10gのブラックココアを使用したら、0.55gの塩が増えることになります。
これ↑↑↑
パンの配合でいうと、かなり注意が必要です。
まず、塩の味。
塩はひとつまみでも、お料理の味を別ものにします。
それくらいに塩の量というのは、味に影響があるのです。
そして、パン作りでの塩の効果は他にもあります。
①イーストのアルコール発酵を遅くする
②グルテンの弾力を強くする(同時に伸びもよくなる)
など、パンのレシピでは少量の塩ですが、役割はとても大きいのです。
ブラックココアを使用する場合には、塩の量の調整は必要になってくると思います。
塩の効果については、こちらのブログを参考にしてくださいね。
【検証!】塩なしパン VS 塩ありパン /パン作りでの塩の効果とは?
パンの配合で超重要!ココアパウダーとブラックココアの吸水量の違い
超重要!!ココアパウダーとブラックココアの吸水量はまったく違います!
実際に実験したものを見ていただくとよくわかります。
↓↓
上の写真は、同量のココアパウダーとブラックココアパウダーを、
同じく同量の水分で練ったものです。
ココアパウダーはペースト状になりましたが、
ブラックココアパウダーはドロドロ。
パン生地はたった数gの水分量が違うだけで、膨らみが悪くなります。
そして、出来上がったパンの食感も全く別物になってしまいます。
もし、ココアパウダーをそのままの量で、ブラックココアパウダーに代用したとします。
配合の水分量を同じにしてしまったら、
ゆるゆるのパン生地になってしまう可能性もあるのです。
つまり、ココアパウダーをブラックココアパウダーに代用するときには、
配合の水分量を少なくします。
これはすっごく大切です。
私も気を付けているポイントのひとつです。
*今回の検証結果なので、製品による違いはあるかもしれません。
【検証①】ブラックココアパウダーはアルカリ性!パン生地の発酵が遅い理由とは?
実際にココアパウダーを配合したパン生地と、
ブラックココアパウダーを配合したパン生地を作って比較してみます。
すでにお話していますが、ココアパウダーとブラックココアパウダーの吸水量は相当違います。
水分量だけは調整して、他の配合はすべて同じレシピでパンを焼きました。
捏ね上げた後のパン生地はこのようになりました。
ブラックココアのパン生地は真っ黒です。
パン生地のグルテンの強さ、パン生地の固さはだいたい同じ位になりました。
このまま室温でゆっくり発酵させました。
同じ時間発酵させたものですが、ブラックココアのパン生地の方が膨らみが小さいのがわかります。
たった1回の検証なので、これで確実な検証結果となるわけではなりませんが、
ここからブラックココアの特徴を考えていきたいと思います。
富澤商店さんのHPでブラックココアについて書かれているものがあり、
参考にさせてもらいました。
https://blog.tomiz.net/posts/18109649/
ブラックココアパウダーは真っ黒ですね。
ココアパウダーと原料は同じカカオ豆です。
でも、この色の違いは製造過程にあるようです。
アルカリ処理をすると、色が黒くなっていくとのことです。
そして、ココアパウダーのpH(ペーハー)について書かれているのが、森永さんのHPです。https://www.morinaga-shoji.co.jp/business/cocoapowder/
ココアパウダーのpHは中性付近になっています。
一方で、ブラックココアパウダーはアルカリ性です。
パン生地はイーストのアルコール発酵によって膨らんでいきますね。
イーストはパン生地が酸性側にある方が、元気いっぱいに発酵してくれます。
そして、パンの骨格を作るグルテンも、酸性の状態のときにやわらかくなります。
わやらかいグルテンをもつパン生地はグーンと伸びやすくなります。
パン生地は弾力が強いことも大切ですが、同時に柔軟性があることも重要なのです。
しかし、ブラックココアはアルカリ性です。
すると、、、イーストの働きが弱くなって発酵はおそくなりますね。
さらに、パン生地が固くなります。
焼きがったたパンは膨らみが悪くなるかもしれない。という予想ができますね。
【検証②】ブラックココアパウダーのパン生地は固くなる?
今回の検証では、冷蔵庫で一晩の一次発酵をとりました。
一次発酵を終えたパン生地がこちらです。
ココアパウダーのパン生地は約3倍弱。
ブラックココアパウダーのパン生地は約3倍に膨らみました。
ブラックココアのパン生地は固めで、山のように盛り上がっていますね。
パン生地自体の弾力が強いので、より大きく膨らんでいるのだと思います。
大きさの差はありますがフィンガーテストをしても、
どちらの生地も適正に発酵しています。
ここから分割し、ミニ食パンを作ります。
成形中、パン生地を扱うときにもココアパウダーとブラックココアの違いがわかります。
ココアパウダーのパン生地は、柔らかめです。
一方で、ブラックココアの生地は締まっていて張りがあります。
この理由を考えてみますね。
ここでも、ブラックココアがアルカリ性であることが関係しているのだろうと思います。
パン生地のグルテンは、酸性にある方がゆるんで柔らかくなります。
アルカリ性のブラックココアが入ることで、
パン生地が酸性になりにくくなって、固く締まった生地になるのだろうと思います。
【検証③】ココアパウダーよりブラックココアパウダーの方が最終発酵も遅い!
発酵の具合がわかりやすいように、パウンド型にいれて発酵させました。
発酵前のパン生地の温度は約16度。
ココアパウダーのものも、ブラックココアパウダーのものもパン生地の温度は同じです。
発酵器の温度は35℃に設定しました。
同じ時間発酵させた結果がこちらです↓↓↓
真ん中にあるのが2種類のパン生地を半分ずつ渦巻きにしたものです。
写真をよーく見てみると、ココアパウダーのパン生地が一番膨らんでいますね。
ブラックココアパウダーのパン生地が膨らみが小さいことがわかります。
ミックスのものはちょうど中間くらいですね。
やはり、最終発酵でもブラックココアパウダー入りのパン生地の方が、
発酵が遅くなりました。
最終的にはどれも同じ高さになるまで発酵させましたが、
数十分の発酵時間の差がありましたよ。
【検証④】ココアパウダーとブラックココアパウダーでパンの膨らみに差はあるのか?
やっと焼きあがりました(^^)
ドキドキしますね~
どれもよく膨らんで窯伸びしていますね。
若干、ブラックココアの膨らみが小さいかな?という印象です。
断面を細かく見ていきましょう。
断面を比べてみると、少しブラックココアのパン生地の方が目が詰まっているように思います。
ココアパウダーのパン生地は、気泡が縦にぐんとよく伸びています。
このふたつのパンの違いの訳を考えていきましょう。
パン生地の膨らみを良くするには??
グルテンの出来具合いが最大のポイントです。
ゴム風船をイメージしてみてください。
よく膨らむパンというのは、ゴム風船と同じです。
薄くのばしても切れない力強さ。
そして、柔軟で伸びの良いしなやかさ。
この両面が揃わないと、パン生地はきれいに膨らんでくれません。
ブラックココアパウダー入りのパン生地は固めになりました。
これは弾力の強すぎるゴムです。
固く、伸びにくい状態では大きく膨らむことができないのです。
パンが大きく膨らむには、
柔らかいけど張りもある。そんなバランスのとれた状態に仕上げるのがポイントになります。
【検証⑤】ブラックココアパウダーのパン生地はココアの味がしない!?
ブラックココアパウダーには注意書きがされていることがあります。
『ココアの風味が弱いため、風味をだしたいときにはココアパウダーと合わせて使う』
これって、本当なのでしょうか?
①パウダーそのもの
②配合したパン
を実際に食べ比べてみました!
『ブラックココア、、苦い。』
ココアの風味はほぼしません。苦くて黒い粉という感じです。
もともと色付けが目的でつくられているものなのでね。。。
ココアパウダーももちろん苦いですが、ココアの甘味がしっかりあります。
カカオ分の高いスイートチョコレートのような感じですかね。
ブラックココアパウダーより油脂分も多いですし、コクのある風味がします。
そして、パンとして焼きあがったものの味と食感を比較してみます。
◎ココアパウダーいりのパン
ココアの風味がしっかりして、とてもふんわり柔らかい食感です。
苦味はほとんどなく、子どもが好きそうな味のパンです。
◎ブラックココアパウダー入りのパン
苦味が強く、ココアの風味はほとんどしません。
食感は、ココアパウダーだけのものと比べるともっちり感が強いかな?
膨らみが小さく噛み応えのある食感になっているのだと思います。
見た目が真っ黒なので、チョコレートの味を期待してしまうためか、
食べた時のギャップをすごく感じます。
◎ミックス
ココアの風味もありつつ、苦味も感じます。
大人向けのココアパンといった印象ですね。
今回はマーブルになっていますが、食感はココアパウダーとブラックココアパウダーを入れたパンの中間くらいな感じです。
渦巻きにすると、色の違いがはっきりしますね。
ココアパウダーで黒くしたい!と思っても、
ブラックココアパウダーを使うほどの色合いはでないはずです。
◎まとめ◎ブラックココアパウダーとココアパウダーは同じではない!パン作りで代用するときには絶対にレシピの調整が必要
ブラックココアパウダーとココアパウダーの特徴をまとめていきたいと思います。
◎ココアパウダーの方が油分が多い
◎ブラックココアパウダーの食塩相当量はとても多い
◎ブラックココアパウダーは吸水量が少ない
◎ブラックココアパウダーはアルカリ性のため、発酵が遅く、パン生地が固くなる
◎ブラックココアパウダー入りのパンは膨らみが悪くなる可能性がある
◎ブラックココアにココアの風味はほとんどない
私はブラックココアパウダーをレシピで使う目的は、
やはり黒色を強調したいときです。
また、ココアパウダーのみパン生地は子供っぽい印象になるため、
ブラックココアを足すことで高級感を演出することもできます。
パン作りでは、『グルテン』や『発酵』という人間には見えない世界での働きを理解することがとても重要です。
素材を足すということは、必ずパン生地のどこかに影響があります。
パン生地は生きているのです。
ひとつひとつの素材をきちんと理解していくと、
レシピの理解やアレンジ力がびっくりするくらいに上がっていくはずです。
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参考資料
富澤商店 https://blog.tomiz.net/posts/18109649/
https://tomiz.com/column/comparison-cocoa-powder/
森永商事株式会社 https://www.morinaga-shoji.co.jp/business/cocoapowder/
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