冷たいパン生地をそのまま成形したらダメなの?
そんなギモンを持つあなたへ。
私も同じ疑問を持っていました。
しかし、完成したパンがパサついている?
そんな経験から、冷蔵発酵で知っておくべき『復温』について学んだのです。
私と同じ疑問を持つ方に、冷蔵発酵で『復温』が必要な理由を分かりやすく解説していきたいと思います。
冷蔵発酵の復温とは?
『復温』という言葉を知っている方は、かなりパン作りの経験がある方かなと思います。
ここでは、冷蔵発酵の基本から簡単におさらいしていきますね。
パン作りの冷蔵発酵は、長時間低温発酵法やオーバーナイト法とも言われます。
それぞれの言葉のニュアンスは厳密には違うと思いますが、
家庭でのパン作りの範囲ではほぼ同じ意味で使われていると考えています。
冷蔵発酵は、パン作りの発酵の工程を冷蔵庫で行う方法です。
私は、パン作りの工程の中で『一次発酵』の部分で冷蔵庫を利用しています。
一次発酵を終えた生地は冷蔵庫から出したわけですから、『冷たい』はずです。
私は冷蔵庫からだしたパン生地の温度をはかるようにしていますが、
夏場の野菜室でも10℃くらいになります。
寒い季節で冷蔵庫内の冷気の当たる場所にパン生地を置いておくと、
1~2℃になる事もあります。
『復温』というのは、冷蔵庫からだしたパン生地を
室温にだして温める工程の事を言います。
ただし『温める』といっても、室温程度に温度を回復させる事です。
冷蔵発酵したパン生地を発酵器で温めたらダメなの?
冷蔵庫からだして早く温めたい!
発酵器に入れても良いと思いますか?
実は、『復温』はだんだんとゆっくり温度を温める事が大切なのです。
私も冷蔵発酵をやり始めた頃は、冷蔵庫からだしたパン生地をすぐに発酵器に入れてしまうことがありました。
すると、、パン生地のキメが粗くなってしまい口溶けが悪い?
そんな経験があります。
その理由を解説していきますね。
図1を見ていきましょう。
冷蔵庫からだしたてのパン生地は、中心部までヒンヤリ冷たい状態です(青色)。
そのパン生地を室温で徐々に『復温』させます(図の上)。
温度は、外側から中心に向かって伝わっていきます。
そのため、パン生地の温度も外側からだんだんと温まっていくことになります。
室温が20℃位とすると、パン生地と室温の温度差がそれほどない状態です。
時間をかけて室温に置いておくと、パン生地の中心部までむらなく温度が上がっていきます。
一方で、冷蔵庫からだしたパン生地を、30℃の発酵器にいれて温める場合を考えていきましょう。
パン生地の温度と、30℃という発酵器内の温度差は大きくなっています。
そのため、パン生地の表面だけが急激に温まります。
しかし、中心はまだ冷たい状態です。
なぜ、この温度差が問題になるのでしょうか?
それは、温度と発酵の進み具合の関係を考えるとスッキリわかりますよ。
イーストの発酵活動は、40℃で最も活発になります。
そして低い温度では、発酵のスピードは遅くなっていきます。
発酵器で温められたパン生地の表面は、一気に30℃近くまで温度があがります。
すると、パン生地の表面だけで発酵が元気いっぱい行われます。
さて、パン生地の中心部分はまだ冷たいままですね。
冷たいままのパン生地の中心部では、発酵は休止状態です。
そうなると、パン生地の表面と中心部で、発酵具合に差がでてきてしまうのです。
上の写真は、二次発酵の時間を変えて焼いたパンの断面です。
左側①は発酵不足。右側④は過発酵の状態です。
これらの断面をみても、発酵の進み具合でパン生地のクラム(内相)の様子が違うことがわかると思います。
冷蔵庫からだしたパン生地を発酵器にいれた場合、表面のみが過発酵の状態になる可能性があります。
パン生地の中で温度にムラがでてしまうと、発酵の進み具合にも差がでます。
すると、焼きあがったパンのキメも粗くなったり、目が詰まったりとバラバラになり、
口溶けが悪くなることが考えられます。
冷蔵発酵の復温はどれくらいの時間必要なのか?
復温を室温で行う事の大切さをお話しました。
では、実際にはどれくらいの時間を室温に出しておけば良いのでしょうか?
目安は、30分~1時間です。
細かく言うと、季節によって違います。
夏場は室温も28℃近くなるでしょうし、春・秋・冬と室温はまったく違います。
温度計をお持ちの方は、パン生地の中心の温度をはかると安心です。
パン生地の中心の温度が15℃~20℃位まで上がっていたら『復温』完了として良いと思います。
見た目と弾力も重要ですね。
パン生地が冷たいときは、生地自体は固くて粘土のような状態です。
室温にだしておき、パン生地の温度が上がるとパン生地が柔らかくなり、弾力が弱くなります。
室温の低い冬場!復温できるのか?
みなさんのお家の冬場の室温はどれくらいでしょうか?
私は東京に住んでいますので、早朝の暖房が効いていない状態でも10℃以上はあります。
しかし、実家は盆地の寒い地方でしたので早朝は部屋の中が2℃!という事もよくありました。
2℃は極端かもしれませんが、通常は暖房をつけて15℃くらいのお部屋にいる方が多いのかなと思います。
いずれにしても寒い冬場は、いくら室温に出しておいてもなかなかパン生地の温度があがりません。
その場合の裏ワザです。
冷蔵庫からだしたパン生地はひとつの大きな塊です。
大きいものほど、中心部まで温かくなるのに時間がかかります。
なので、分割して小さくしてしまいましょう!
ベンチタイムの時間で復温を行うイメージです。
最終発酵で発酵器にいれる前に、パン生地の温度が室温程度にあがっていれば
問題なく適正な状態でパンが焼きあがるはずです。
もし、分割しないまま成形するレシピの場合は、
気長に室温に置いておくのが一番手軽ではないかと思います。
急ぐ場合は、冷蔵庫にいれたままの冷たい容器からだして復温するなどの方法もありますが、
私は面倒だな~と思ってしまいます。
室温が20℃以下の環境だと、パン生地の温度が15℃まで達しないかもしれません。
この温度が絶対というわけではないので、ある程度の温度のところで分割⇒成形と進めてみるのもしかたがありません。
とりあえず、そのレシピで試してみて問題なく美味しく焼き上がればOKというイメージで良いかと思います。
◎まとめ◎冷蔵発酵では復温は必須!冷たいパン生地を急激に温めないように注意してくださいね
発酵に冷蔵庫を使う『冷蔵発酵』では、パン生地が一旦10℃以下に冷えてしまいます。
その冷えたパン生地を、室温に置いて温めるのが『復温』という工程です。
ポイントを下記にまとめますね。
◎冷蔵庫からだした生地は室温に置く。
◎室温でゆっくりとパン生地の温度をあげる。
◎パン生地の中心部までムラなく温度をあげる。
◎パン生地の中心部の温度は15~20℃になるのが目安
◎冬場や室温が低いときは、分割してから『復温』してOK。
復温は冷蔵発酵では必須の工程です。
通常のパン作りでは行われないので、迷うことも多いと思います。
ただ、工程の理由をしっかりと自分のものにすれば大丈夫です(^.^)
みなさんのパン作りのお役に立てれば嬉しいです♪
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