パン作りに使うオーブンを新しく買いたいと考えているあなたへ。
過熱水蒸気のオーブンを買う必要はある?
生徒さんからもよく聞かれます。
オーブンはどんなものが良いですか?
このブログでは、以下の内容がわかりますよ!
◎過熱水蒸気って何?
◎パン作りに蒸気が必要なわけ
◎過熱水蒸気のパン作りへの効果
◎過熱水蒸気のオーブンをパン作りにどう活用するか
結論からいうと、パン作りにハマってきたら
ぜひ使ってほしいのが『過熱水蒸気』です。
では、ひとつずつ丁寧にお話していきましょう!
過熱水蒸気ってそもそも何?
過熱水蒸気?
オーブンから蒸気が出る。
というのはわかります。
『過熱』って何なのでしょうか?
水は0℃から100℃までが、液体の水として存在しています。
この水を100℃より高い温度に加熱します。
すると、水は気体の水蒸気に変わります。
そして、気体の水蒸気を熱すると、水蒸気は100℃より高い温度になります。
これが、過熱水蒸気です。
加熱水蒸気は200℃にもなるというわけです。
そのため、気体である過熱水蒸気は、目には見えません。
過熱水蒸気のオーブンの庫内をのぞいても、
全く蒸気がでていないように見えるのはそのためです。
過熱水蒸気機能については、
オーブンレンジのメーカーのウェブサイトにわかりやすい解説があります。
私が参考にさせていただいたウェブサイトを記載しますね。
SHARPさんはヘルシオについてのページで動画付きの解説がありましたよ。
参考
中部電力ミライズウェブサイトhttps://miraiz.chuden.co.jp/solution/inte/electrical/steam/index.html
SHARPウェブサイト
パン作りに蒸気が必要なわけ①膨らみがよくなる
蒸気ってパン作りに必要なの?
この疑問についてお話していきたいと思います。
油脂が入らないパン。
代表としてハード系のパンには必須になります。
その理由を考えていきましょう。
キーワードは、油脂が入らないパン。
油脂が入ったパンは、よく膨らみます。
例えば、バターロールなどですね。
バターなどの油脂は、パン生地が膨らむための潤滑油になります。
すべりの良いパン生地は、グーンと膨らむというわけです。
油脂の役割についてはこちらのブログを参考にしてくださいね。
【パン作りの豆知識】バターの代用にサラダ油を使って良いのか?
一方で、油脂がはいらないパン。
例えば、バケットやカンパーニュなどのハード系のパンです。
ハード系のパンは、潤滑油になる油脂が入りません。
そのため、オーブンの中でも膨らみが悪くなります。
そして、膨らみがわるいパンを高温のオーブンで焼きます。
すると、クラスト(皮)の部分が真っ先に焼き固められてしまいます。
クラスト(皮)が焼き固められてしまったパン生地は、
固い殻に覆われているような状態。
それ以上膨らむことができません。
その結果、ふんわり感のないギュッと詰まったパンになってしまいます。
ここに蒸気をいれます。
高温の蒸気で満たされたオーブンの中に
約30℃のパン生地が入ります。
すると、パン生地の表面が一気に結露して水に濡れます。
冬の日の窓がくもるイメージです。
パンのクラスト(皮)になる部分は、高温の蒸気の中では常に濡れた状態です。
やわらかいクラストは伸びることができます。
そのため、パン生地は大きく膨らんでいくという仕組みです。
『高温』の蒸気というのが大切。
霧吹きは液体の水。
霧吹きでは、蒸気の役目にはならないのです。
これは、後でくわしく説明しますね。
パン作りに蒸気が必要なわけ②クープが良く開く
焼く前のパン生地にクープ(切り込み)を入れるのも、膨らみをよくするためです。
オーブンの中が蒸気で満たされている場合。
クープの中も常に濡れている状態です。
柔らかい状態のクープは、グググーンとよく開くというわけです。
オーブンの蒸気の量が少ないと、クープがすぐに乾いてしまいます。
焼き固まったクープは大きく開くことができなくなってしまいます。
パン作りに蒸気が必要なわけ②パンの表面にツヤがでる
パン屋さんのバケットって、ツヤツヤしていませんか?
これこそ、高温の蒸気の効果です。
写真で見比べてみるとよくわかりますね。
低温の水をかけただけの霧吹きでは、ツヤは出ません。
ちょっと深堀りしますが、、、
この『ツヤの正体』。
これは、まさしくベーグルのツヤと同じです。
パン生地の表面が高温の蒸気で濡れます。
すると、小麦粉のデンプンがα化(糊化)します。
α化したデンプンが、高温で加熱されるとツヤが出るのです。
霧吹きした場合、水でパン生地の表面が濡れているだけですから、
デンプンのα化が十分に進みません。
そのため、ツヤがなくマットな表面になってしまうのです。
パン作りに蒸気が必要なわけ③焼きムラを防ぐ
蒸気のおかげで、パンの焼きムラを防ぐことができます。
その理由は図3をみてください。↓↓
高温の蒸気で満たされたオーブン。
高温の蒸気は四方八方から、パン生地にくっつきます。
この時、高温の蒸気は『熱』をパン生地の中に放出します。
過熱水蒸気で加熱するというのは、実はこのこと。
『水で加熱する』ってどういうことか。
意外と難しい仕組みですよね。
100℃以上に加熱された過熱水蒸気は、効率的に食品を熱することができるという事です。
ただ、家庭用のオーブンは庫内がせまいので、
過熱水蒸気を入れても焼きムラはあります。
ある程度は仕方がないと私は思っていますよ。
霧吹きは蒸気の代用にならない!
最も手軽に、蒸気の代用をする場合。
シュッシュッとパン生地の表面に霧吹きをすることがあります。
霧吹きをしてもクープは開かない印象があります。
霧吹きは蒸気の代用になるのでしょうか?
私の今までの経験を踏まえて、過熱水蒸気と霧吹きの効果を比べてみました。
表で一覧にしましたので参考にしてください。↓↓
霧吹きのみで焼いた経験は何百回もあります。
正直言って、霧吹きは高温の蒸気の代用にはなりません。
でも、蒸気付きのオーブンを持っていない場合。
霧吹きで蒸気の効果を補うことは可能です。
ただし、霧吹きだけではハード系のパンをグーンを膨らますことは難しいと思います。
クープもほぼ開きません。
『高温』の蒸気であることが大切です。
水をかけるだけの霧吹きには限界があります。
家庭のパンつくりで『高温』の蒸気をどうつくる?
過熱水蒸気機能のオーブン。
私が持っているのは、東芝さんの石窯ドームです。
もう7年くらい前に購入したものなので、今の機種はもっと機能も良くなっていると思います。
何年も使用していますが、今のオーブンの過熱水蒸気の機能だけだと、
ハードパンのクープはあまり開きません。
なので、自分で蒸気をプラスしています。
私のレッスンでは、パン作り歴ベテランの生徒さんもいて、
皆さん色々と工夫をして『高温』の蒸気を作っているとお話されています。
◎アツアツのレンガに熱湯をかける
◎アツアツのタルトストーンに熱湯をかける
◎アツアツの天板に熱湯をかける
色々と方法はありますね。
ただ、蒸気はものすごく高温になります。
やけどには十分注意しましょう。
レッスン中は、蒸気の入れ方について
いくつかの方法を生徒さんにみていただいています。
◎霧吹き
◎過熱水蒸気
◎電気オーブン、ガスオーブン
など
比べてみると、パンの表面のツヤなどの差がよくわかりますね。
あとは、生徒さん自身のやりやすい方法でやっていただくのをおススメしています。
いくら高温の蒸気が良いといっても、家庭の道具には限界もあります。
無理してやっても、なかなか続かないですしね。
もちろん、霧吹きだけでも良いですよ。
霧吹きに限界があることを承知の上で使うのであれば、
パンの膨らみが多少わるくても悩むことはありません。
過熱水蒸気をパン作りにぜひ活用しよう!
パン作りを続けていきたい。
だんだんのパン作りのトリコになってきたら、欲しくなるのがオーブンです。
オーブン選びの時、過熱水蒸気の機能の有無はよーく考えて選んでくださいね。
ハード系のパンは一切作らない。
という場合は、過熱水蒸気機能がなくてもよく膨らむパンをつくることができます。
少し蒸気が欲しいなぁという場合は、霧吹きでも代用できるはずです。
ふわふわパンをつくるのが大好きな方は、過熱水蒸気は必須ではないと思います。
一方、ハード系のパンにも挑戦したい!
という場合は、ぜひ過熱水蒸気機能のあるオーブンをおススメします。
他の方法で蒸気を入れることもできますが、やけどにも注意です。
過熱水蒸気は効率的に高温の蒸気をいれることができます。
友人や生徒さんからも色々と話を聞きますが、
メーカーによって、オーブンの過熱水蒸気がパン作りに向いているかどうか?
差があるように思います。
あとは、実際につくってみるしかないですね。
特に、ハード系のシンプルな配合のパンは、
生地の出来具合が命です。
オーブンの機能も大切ですが、
パン生地自体のこね具合や、発酵の見極めができないとクープは開きません。
配合によっても、パックリとクープが開きやすいレシピもあります。
少し難しい内容になってしまいましたが、
過熱水蒸気のオーブンはパン作りにぜひ活用してほしいと思っています。
何より、パン作りの幅が広がります。
THEハード系のパンでなくても、過熱水蒸気の機能を活かすと
ぐんと出来栄えがよくなるパンもあります。
オーブン選びやパン作りの参考になればうれしいです♪
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参考文献
科学でわかるパンの「なぜ?」
中部電力ミライズウェブサイト
SHARPウェブサイト