【パン作り】水道水よりもミネラルウォーター(硬水)の方がよいの?

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パン作りのお水にミネラルウォーターを使うという話。
なんだかカッコいい。

そんなイメージがありませんか。
なんだかすごくこだわっていて美味しいパンが焼きあがりそうです。

では、なんでパン作りにミネラルウォーターを使う方がいるのだろう?
という事を考えたことがありますか?

このブログではミネラルウォーターを使う理由について深堀りしていきたいと思います。

ミネラルウォーターの硬水と軟水って何?

水の硬度というのは、カルシウム(Ca)とマグネシウム(Ⅿg)の量で決まります。

国によって単位が違うそうなのですが、
日本とアメリカでは水1リットル当たりの量で考えるようです。

カルシウムとマグネシウムの量を炭酸カルシウム(CaCO3)の量に換算して表します。
単位はmg/ℓです。

簡単に考えると、水に含まれるカルシウムとマグネシウムが多いものが硬水。
少ないものが軟水です。

WHOの分類では、硬度120mg/ℓ未満が軟水です。
そして、硬度120mg/ℓ以上が硬水になります。

ミネラルウォーターもたくさんの種類がありますが、
軟水のものも硬水のものもありますよね。

パン作りに問題なく使える!日本の水道水は軟水

日本の水は、一部の地域を除いては硬度60mg/ℓ以下の軟水です。

地域によって、水の硬度の差はあるようです。
私も普段のパン作りでは、普通の水道水を用いています。

水道水でパン作りをされる方も多いと思いますが、
問題なく美味しいパンを焼くことができます。

パン生地の膨らみに影響があるのは、お水の硬度だけではありません。
こね具合や発酵の見極めもとっても大切です。

パン作りの材料や、すべての工程を通してパン作りをします。
硬水でなければ美味しいパンが焼けないということはないのだと思います。

パン作りに硬水を使う理由①ミネラルがグルテンを強化する

パンが膨らむためには小麦粉のたんぱく質から作られる『グルテン』が必要です。

だからこそ、たんぱく質量の多い強力粉がパン作りには使われます。

バケットで有名なパリ。
パリで使われるフランスの小麦粉は準強力粉です。

アメリカやカナダなどで栽培されている強力粉に比べれば、
たんぱく質量は少なくなります。

準強力粉のたんぱく質量は少なく、できるグルテンの量も少ないはずです。
でも、グーンと膨らむパンを作ることができます。

シニフィアンシニフィエの滋賀シェフの本を参考にさせていただきましたが、
フランスでバケットが生まれたのはパリの水が硬水だからではないかと、
滋賀シェフは綴っています。

硬水は硬度が高い水です。
フランスのパリの水の硬度は250mg/ℓ以上にもなるそうです。

硬度は水の中にマグネシウム(Ⅿg)とカルシウム(Ⅽa)が含まれている量であらわされます。
非常にミネラル分が豊富なパリの水。

パン作りでは、どのような役割があるのでしょうか?

小麦粉のグルテンは、グリアジンとグルテニンというたんぱく質が絡み合うことでできます。

グリアジンは、ねばねばと糸状に伸びる性質(粘性)があります。
そして、グルテニンは弾力のある性質があります。

このふたつのたんぱく質でできる『グルテン』は粘弾性を持つことになります。

ミネラル分は、グルテニンに作用します。
弾力にかかわるグルテニンの結合をどんどん進めていくのです。
すると、グルテンの弾力が増して強い骨格を持ったパン生地ができるというわけです。

フランスの小麦粉はたんぱく質量が少ないものが多いですが、
パリの水が硬水だからこそ、パン生地の骨格が強くなります。
そして、気泡たっぷりのバケットができるという事なのですね。

パン作りに硬水を使う理由②ミネラルが発酵をすすめる

硬水にはマグネシウムやカルシウムといったミネラル分が多く含まれます。

そして、これらのミネラル分はイーストのアルコール発酵を進みやすくする働きがあります。

硬水を使ったほうが、発酵がどんどん進むわけなので、炭酸ガスも多く発生します。
発酵による旨み物質もパン生地の中に蓄えられていきます。

硬水を使う事で、パン生地の旨みが増すというのは、
バケットなどのシンプルなパンほど重要になりますね。

さて、ミネラル分が発酵を促進する理由を考えていきましょう。
ここはかなり科学的な部分です。
読み飛ばしても大丈夫です。

イーストのアルコール発酵には、多くの『酵素』がかかわっています。

酵素って聞いたことがあるけど、実際はよくわからないという方も多いと思います。

私たち人間もそうですが、
生物が生きていくためには、体の中で非常に多くの反応が起こっています。

科学反応なので、イメージはこんな感じです↓↓
A+B⇒Ⅽ+Ⅾ

この反応を、進めるために大活躍するのが『酵素』です。
難しい言い方をすると、酵素は体の中での『触媒』になります。

酵素があると、A+B⇒C+Ⅾという反応が、どんどん促進されます。
イーストのアルコール発酵で考えると、
酵素が十分にあると炭酸ガスとアルコールが大量にできる。そんなイメージです。

そして、ミネラル分となる金属イオンも、酵素反応を助ける働きがあります。

私たちの生活の中でも、ビタミン類を多く含む野菜や果物を食べることは大切!と
幼いころから言われてきましたよね。
ビタミン類にも、体の中での酵素反応を進める働きがあるのです。
食べ物の中に含まれる栄養素は、体の中でいろいろな働きをしているということになります。

ミネラルウォーターの硬度に要注意!

水の硬度はパン生地の固さや発酵の進み具合に、多いに影響があります。

硬度は高ければ高い方が良いのでしょうか?
そういう訳ではないようです。

硬度が高いと、グルテンの強さが増して、パン生地が固くなりますね。
パン生地がよく膨らむためには弾力があるだけではだめです。
やはり、柔軟に良く伸びるしなやかさが必要です。

そして、発酵もどんどん進めばよいというわけでもありませんよね。
やはり何事も適度なポイントがあるはずです。

硬水で有名なコントレックスというミネラルウォーターがあります。

硬度はなんと約1468mg/ℓです。

フランスのパリの水の硬度は250mg/ℓ以上とのことなので、
コントレックスをそのままパンに使ったら、、、どうなるのでしょうか。

実際に検証してみましたので、こちらのブログで紹介しています 。
【比較/検証】味も食感も段違い!!超硬水・硬水・軟水でパンを焼くとどうなるのか?

パン作りにおいては、ミネラルウォーターの硬度には気を付けてください。
必要な場合は、軟水である日本の水道水と混ぜて使う必要があります。

日本の水道水よりも硬水で作った方がおいしいパンになる?

今までのまとめをしてみたいと思います。

◎日本の水道水は硬度60mg/ℓ以下の軟水
◎フランスのパリの水は250mg/ℓ以上の硬水
◎硬度が高い水のほうが、グルテンが強くなる
◎硬度が高い水のほうが、発酵がどんどん進む

さて、、どうすればよいでしょうか?

硬水を使うべきか、軟水を使うべきかはパンの種類によっても違うはずです。

パンの教本を参考にしますと、硬度50~150mg/ℓの範囲がパン作りに適しているとのことです。さらに、この範囲の中で高めの方が良いそうです。
日本の水道水は軟水ではありますが、問題なくパンを作ることができるだろうと予測できますね。

色々な意見があって正解はないと思いますので、
あくまで私の考え方をお話したいと思います。

私がパン作りをするときには日本の水道水を使います。
そして、パン教室のレッスンでも、基本的には水道水を使います。

その理由は大きく2つです。
◎パン作りのために硬水を購入することは、家庭でのパン作りでは負担が大きいから。
◎レッスンで用いているレシピでは、日本の水道水で問題なく作ることができるから。

硬水であるミネラルウォーターは、市販でも色々なものが売られていますね。
私はわざわざ硬水を買って飲む習慣がありません。

ミネラルウォーターを、パン作りの数百グラムだけ使うために買うのは、
生徒さんにすすめることはできないなぁと思います。

そして、レッスンで作るものは水道水で試作しています。
小麦粉も、一般的な製菓材料店で手に入るものだけを扱っています。

日本の水道水は軟水ですが、
選ぶ小麦粉のたんぱく質量や、こね具合、発酵の時間などを調整することで
ふっくらと膨らんで旨みのあるパンを作ることができると思います。

むしろ、おいしい水道水が使える日本だからこそ、
手に入りやすい水道水でできるパンのレシピの方が、
手作りパンをする生徒さんたちには喜んでいただけるのかなと思っています。

基本のレッスンでは、水道水を利用しますが、
番外編として硬水を使うレシピもあったら面白いかな?とは思います。
色々にチャレンジできるのも、家庭パンの面白さでもあります。

私自身も、チャレンジしていきたいところです。

最後に大事な部分です。
レシピにお水の硬度の指定があれば、必ず守ってくださいね。
パン生地の出来上がりに大きく影響するのが、お水の硬度です!

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参考資料
コントレックス https://www.contrex.jp/
科学でわかるパンの「なぜ?」
パンの世界 基本から最前線まで
NEW 調理と理論 第二版
パンづくりのメカニズムとアルゴリズム