型に塗る油ってサラダ油でも大丈夫ですか?
これ↑↑
予想以上に多かった生徒さんからの質問です。
確かにそうですよね。
型に油を塗るのは予想以上に面倒なものです。
私は、レッスン中も自分自身でパン作りをするときにも
パンの型には『離型油』を塗ります。
スプレー式のシュッとかけるタイプのものですね。
ただ、このスプレーは非常に大容量なのです。
私は頻繁にパンを焼くので良いですが、
たまにしかパンを焼かないのにこのスプレーを買ってもね。。
いくら保存性が良いといっても、使い切るのに何年もかかるのは、、
と思うのもうなずけます。
このブログでは、下記のギモンにお答えします。
◎パンの型に塗る油にサラダ油を使う事はできるのか?
◎離型油って何?
生徒さんからの質問で気が付いた、素朴な疑問。
私なりの見解と調査の結果を報告したいと思います。
そもそもパンの型には油を塗るべきなのか?
この見出しの質問の答えは『YES』です。
私は、パンの型には必ず油脂を塗るようにお伝えしています。
その理由は大きく3つあります。
①『パンが抜けなくなる事件』が起こるから。
②焼き型自体の劣化を防ぐため。
③抵抗なく窯伸びするために、油を塗った方が良いから。
①の型から抜けなくなる事件については、想像通りです。
まさに悲劇。。
経験したことのある方なら、泣きたくなる気持ちを共感していただけると思います。
②の焼き型自体の劣化を防ぐため。
からお話していきたいと思います。
例えば、テフロン加工がされている焼き型の場合、
油を塗らないでパン生地を入れても、テフロン加工が良い状態であればスルッと抜けます。
では、油を塗らなくて良いのでは?
ごもっともな疑問です。
かっぱ橋の馬嶋屋さんのホームぺージを参考にさせていただいたところ、
テフロン加工の劣化を防ぐために、少量の油を塗ることをおすすめされていました。
テフロンのフライパンも、
少量の油を塗るほうが長持ちすると聞いたことがあります。
その記載を読んでからは、迷わずテフロン加工の焼き型にも油脂を塗るようにしています。
道具はできる限り長持ちしてほしいですよね。
そして、加工が劣化し始めたテフロン加工の型を使うと、
見事にくっついてしまうこともあります。
やはり、型離れのための油脂は塗っておいた方が安心です。
テフロン加工の焼き型については、こちらのブログで詳しく解説しています。
【材質の特徴を解説】食パン型はテフロン加工とアルタイトのどちらが良い?
もう一つの、③抵抗なく窯伸びするために油脂を塗った方が良いから。
これもイメージ通りですね。
窯伸びというのは、パン生地をオーブンに入れた後に
グーンと伸びて、大きく膨らむことを言います。
型に入れて焼き上げるパンの場合、
焼き型と生地がスルスルとすべってくれる方が伸びやすいに決まっています。
パン生地が型にくっついてしまうようでは、
本来伸びるはずのパン生地の窯伸びに、
ストップをかけてしまうのと同じことになってしまいますね。
【検証】パンの型にサラダ油を塗っても良いのか?
考えるよりも、実験した方が早いので早速試してみました(*^^)v
今回使用したのは、ステンレス製の焼き型です。
レッスンの中でも頻繁に登場する、ミニパウンド型でいざ検証してみますよ!
私が使っているサラダ油は、キャノーラ油です。
実際に型に塗ってみると、イメージ通りに液だれしますね。
そして、、、
はい!焼きあがりました。
意外とすんなり抜けました(笑)
あら、大丈夫だ。
ちょっと拍子抜けな感じですが、サラダ油でも問題なく使う事ができました。
ただし、、この食パンは油脂としてバターを8%配合しています。
一般的は食パンに含まれる油脂は5%位です。
パン生地自体に油脂を含んでいるので、くっつきにくいという性質はあると思います。
離型油って何?
さて、パン作りによく使われるスプレー式の『離型油』。
これは一体何なのでしょうか?
実際に原材料名を見てみましょう。
食用植物油脂。
これはサラダ油などと同じ液状油脂ですね。
そして、気になるのが『乳化剤』。
他のスプレー状の離型油も調べてみましたが、
大豆レシチンなどの乳化剤が入っているものが多いようです。
この乳化剤は何のために入っているのか?
その答えが、サラダ油にはない離型油のメリットという事になります。
ここで乳化剤について詳しく説明していまうと話がややこしくなってしまうので、
分かりやすい例を挙げてお話していこうと思います。
『乳化』というのは、本来は混ざらないはずの油と水が、
きれいに均一に混ざりあうことを言います。
たとえば、マヨネーズや乳液なんかもそうですね。
その『乳化』のお助け役が『乳化剤』です。
読んだそのまま(笑)
そして、イメージしてほしいのは乳化したものの見た目です。
マヨネーズや乳液もトロッとしていませんか?
こんな感じで、乳化した状態のものはトロッと粘り気のある状態になるのです。
離型油の主な原料は『植物油脂』です。
液体でサラサラな状態ですよね。
焼き型に塗ると液だれしますし、
部分的に塗られていない場所があってもおかしくないはずです。
この液状の植物油脂に乳化剤を加えることで、
サラサラの状態から、少し粘り気のある油に変化させている。
これが離型油の特徴です。
すると、どんな良いことがあるのかというと、
型にムラなく油を塗ることができるし、液だれもしにくくなります。
そして、複雑な形状の焼き型にも塗りやすいというメリットもあります。
液状油脂のデメリットを改善するために、
加工された油脂が『離型油』という風に考えることができますね。
焼き型に塗る油脂にバターやショートニングが良いといわれる理由
離型油を使わない場合。
おすすめなのは、やはり『バター』です。
ここまで読んでくださった方は、何となくその理由がわかってきましたか?
バターは常温で固形の油脂です。
焼き型に塗る時も、
もちろん液だれしませんよね。
ムラなく均一に油脂を塗ることができるのです。
ただし、型にバターを塗るとパンの香りがバター風味になってしまいます。
バターが配合されているパンはそれで問題ありません。
しかし、バターを配合していないパン生地の表面だけがバター風味というのは
大分違和感がありますよね。
そこで登場するのが、無味無臭のショートニングです。
ショートニングは常温で固形の油脂です。
無味無臭のため、他の素材の味を邪魔することなく
焼き型にぬることができます。
ショートニングが家にある!という方は
どんな配合のパン生地にも使いやすいのではないかと思います。
◎まとめ◎パンの焼き型に塗る油の特徴
パンの焼き型に塗る油脂の特徴をまとめてみたいと思います。
◎バター(おすすめ度★★)
常温で固形。液だれせずし、均一に塗ることができる。
パンのクラスト(皮)がバター風味になるため、風味がよくなる。
ただし、バターを配合していないパン生地には不向き。
常温に戻すのが面倒、、かな。
◎離型油(おすすめ度★★★)
スプレー式で、塗りやすく安価。
原料は植物油脂だが、乳化剤が入っていて粘り気が増している。
ムラなく塗れるし、液だれもしにくい。
無味無臭のため、どんなパンにも使う事ができる。
保存性も高いですし、グラタン皿にも使えます。
個人的には一本あると便利だと思っています。
◎サラダ油(おすすめ度★)
液体のサラサラした油脂。
液だれしやすく、ムラがでやすい。
油脂を配合しているパン生地であれば、サラダ油でもくっつく事なく抜けるのではないかと思います(全ての焼き型で試していないので、確証はありません)。
テフロン加工などの表面加工がされている焼き型であれば、
サラダ油で十分だと考えています。
無味無臭でどんなパン生地にも使えます。
◎ショートニング(おすすめ度★★★)
おすすめだけど、常備している人が少ないですよね。
持っている人はぜひ使ってください。
常温で固形のため、液だれしにくくムラなく塗ることができる。
無味無臭で、どんなパン生地にも使える。
低温でも比較的柔らかく、塗りやすいのもメリット。
パンの型に塗る油脂について超深堀りしてみました(*^^)v
おそろしい『型から抜けない事件』が起こらないために!
香りや利便性を考慮して、焼き型に塗る油脂を選んでみてくださいね♪
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西東京市パン教室アトリエエピス 井手芙雪(いでふゆき)
参考資料
Cottaホームぺージ
馬嶋屋菓子道具店ホームページ
中西功 調理用,調味用としての油脂の利用 日本調理科学会誌 Vol. 47,No. 2,114~116(2014)