ヨーグルトをいれたパンってもちもちしておいしいよね。
何となく、そんなイメージありませんか?
『何となく』は間違っていないのですが、、
では、ヨーグルトの何がパンをしっとりさせるの?
そんな風に聞かれると、言葉に詰まってしまうと思います(^^;)
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私が作るパンのレシピには、ヨーグルトがよく登場します。
なぜなら、ヨーグルトにはパンの味と食感を劇的に変えてしまう効果があるからです。
ヨーグルトを有効に使うと、パンは新たなおいしさへと変化します。
しかし、、、使い方を間違えると、
『パンが膨らまない』そんな落とし穴に落ちてしまうこともあります。
このブログでは、パン作りでのヨーグルトの効果を、
科学的な視点でマニアックに解説していきます(*^^)v
ヨーグルトといえば乳酸菌!パンとの深ーい関係性
ヨーグルトには乳酸菌が含まれます。
もともと、ヨーグルトの原料は牛乳です。
その牛乳を乳酸発酵させたものがヨーグルトです。
ここまでは聞いたことがある方も多いと思います。
乳酸菌は乳酸発酵をすることで、『乳酸』という物質を作り出します。
乳酸は『酸』なので、すっぱいわけですね。
牛乳の中が酸性になると、牛乳に含まれるカゼインというたんぱく質があつまって塊(かたまり)になります。
これがヨーグルトです。
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長くなりましたが、ヨーグルトの中での一番の働き者。
それが乳酸菌です。
この乳酸菌。
実は、パン作りとは切っても切れない深ーい関係を持っています。
乳酸菌の働きを知らなければパン作りを理解できない。
それくらいに、乳酸菌は大切です。
少し歴史的な話になりますが、
今や工場で大量に培養された『イースト』でのパン作りが主流になっています。
しかし、イーストが登場したのは1900年代の事。
それまでの数千年の間は、パン作りは野生の酵母を利用して作られていました。
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そして、この自家製酵母の種おこし。相当な手間をかけて作られています。
この作業の影の立役者が乳酸菌です。
乳酸菌とパン酵母はとっても仲良しで、発酵種の中で助け合いながら共存しているのです。
この分野では様々な研究もおこなわれているようです。
私が調べた中でもいくつかの論文が見つかりました。
さて、酸っぱいパンというイメージですぐ思いつくのは、
やはりドイツパンでしょうか。
ドイツパンの代表であるライ麦パンでは、『サワー種』がよく使われます。
サワー種を起こすとき、増えてほしいのはもちろんパン酵母ですよね。
しかし、種おこしの最初の段階で増えてくるのは、実は『乳酸菌』なのです。
くわしく考えていきましょう。
乳酸菌が増えると、乳酸などの酸性の物質を作ります。
すると発酵種の中が酸性になります。
よく、食べ物の日持ちを良くするために『酢』を調味料に使う事がありますよね。
日常生活に登場する微生物の多くは『酸』が苦手なのです。
つまり、乳酸菌が増えることで雑菌の繁殖を防ぐことができます。
一方で、パンを発酵させるパン酵母。
この子は、弱酸性の環境が大好きです。
発酵種の中で乳酸菌が酸性の環境を作ると、パン酵母が増えてきます。
そして何日も種継ぎを行っていくと、十分にパン酵母が増えた発酵種ができあがります。
ここにはたくさんの乳酸菌も共存しています。
この乳酸菌が自家製パン種のおいしさのもとになっているのです。
ちなみに、パン酵母は乳酸菌の恩恵をうけているだけではありませんよ。
パン酵母が作り出すアミノ酸などの物質は、乳酸菌のえさになります。
このように、パン酵母と乳酸菌はお互いにwinwinの関係性。
共存して仲良く暮らしていけるのがよくわかりますね。
【パン作りでのヨーグルトの効果①】翌日までしっとりもちもちのパンになる!
手作りパンは翌日になると固くなってしまう。
このお悩みの原因は根深く、そして非常によく聞かれる質問でもあります。
パン作りの配合ももちろんの事、
実際の工程がうまくできていない事が原因になっていることもしばしば(^^;)
ひとつひとつを語っていくと、数時間は話せるかもしれません、、、(苦笑)
それくらいにパン作りというのは深くて難しいものなのです。
そこで登場する救世主のひとつ。
それが『ヨーグルト』です。
冒頭でも書きましたが、ヨーグルトを配合したパンは『しっとり感がアップ』します。
そして、焼き立てでなくても『しっとり感が長持ち』してくれるのです。
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【結果】ヨーグルトを入れるとパン生地がしっとりする。
↑↑これは、分かりました。
では、なぜヨーグルトをいれるとしっとりするの??
気になるのはここの部分だと思います。
ここでも登場するのは乳酸菌です。
私が調べた論文の中で、サワー種での乳酸菌の働きについて述べられているものがいくつかありましたので、私なりの解釈も含めてわかりやすくお話していきたいと思います。
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乳酸菌の働きのひとつとして、
水分の保つことのできる物質を作りだすことがあげられます。
乳酸菌の中には、『デキストラン』という保水性の高い多糖類を作るものがいるようなのです。
『保湿力が高い』
こう聞くと、化粧水のようなイメージですよね。
つまり、うるおい成分です。
乳酸菌が生きていると、パンのしっとり感をアップさせる保湿成分を生み出してくれるというわけですね。
そして、パン生地の水分が抜けにくいということは、
もちろん翌日もその先も、、、パンのしっとり感を長持ちさせることができるのです。
【パン作りでのヨーグルトの効果②】酸っぱいパンはおいしい?納得の理由とは
ドイツパンは酸っぱくて苦手。
一般的にもそのように言われることはとても多いと思います。
確かに、売っているパンの中にも酸味の強いパンもありますね。
ただ『酸味』って、実は『おいしさ』に関わる大事な味なのです。
さて、コーヒーやチョコレートは好きですか?
産地などの違いでさまざまな香りのものがあって、選ぶのも楽しいですよね。
私も大好きなので、色々なものを食べ比べては楽しんでいます(*^^)v
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コーヒーやチョコレートを食べていると、
ほのかに感じるのが『酸味』です。
酸味の程度は、製品によって違います。
ただ、香りの奥に感じる心地よい酸味は、味に奥行きを出します。
『あぁー、味があっておいしい。』
しみじみ感じるような奥深いおいしさになるのです。
パンでも同じです。
程よい酸味は、パンの味を100倍以上も奥深いものにしてくれると思っています。
この酸味のコントロールは、パン作りのポイントといっても良いと思います。
乳酸菌の働きが強すぎて、酸っぱすぎるパンになっては元も子もありません。
『程よい酸味』
乳酸菌の働きで、パンは何倍にもおいしさを増していくのです。
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また、ライ麦や全粒粉など雑穀系の粉を使ったパンは独特のクセがあります。
えぐみというのですかね。
それが、濃厚な風味となるのですが、やはり食べにくさの原因にもなります。
これらの雑穀系のパンと酸味の相性は抜群です。
程よい酸味があることで、独特のクセをカバーしてとっても食べやすい風味に変えてくれます。
【パン作りでのヨーグルトの効果③】パン生地がグーンと伸びる!作業性もやわらかさもアップ
ヨーグルトって酸っぱい。
ヨーグルトは酸性です。
ヨーグルトを配合したパン生地のpH(ペーハー)も酸性になるはずです。
パン生地とpHの関係性。
考えたことがあるでしょうか?
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パン生地の弾力を作るのは『グルテン』です。
グルテンは小麦粉に含まれる『グルテニン』と『グリアジン』というタンパク質が、
材料の水と混ざり合うことで作られます。
グルテンを作るもととなる『グルテニン』。
このたんぱく質は酸性で溶ける性質があるのです。
酸性になるとグルテンの一部が溶けるわけですから、
パン生地が酸性になれば、パン生地の弾力は失われていきます。
つまり、パン生地のpHが酸性になると、パン生地は柔らかく伸びやすくなるということです。
ヨーグルトを入れることで、パン生地の伸びが良くなる。
すると、オーブンの中でものびのびと良く膨らんで柔らかい食感に仕上がるというわけなのです。
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ただし、ここには大きな落とし穴があります。
それは、、ヨーグルトを入れすぎると、パン生地がダレるということです。
酸性になりすぎると、パン生地が過剰に柔らかくなります。
ダレたパン生地は、大きく膨らむために必要な弾力を失います。
結果として、ヨーグルトを入れすぎたパン生地は膨らみが悪くなるのです。
実際に私も試したことがあるのですが、
ヨーグルトの配合量を増やすと、もそもそと口当たりの悪い食感になります。
ヨーグルトを配合しているレシピを見る時のポイント。
それは配合量が過剰になっていないか?
ネットなどで検索したレシピを作る前に、ヨーグルトのベーカーズパーセントに注目すると
面白いことがわかるかもしれませんよ(*´ω`)
【パン作りでのヨーグルトの効果④】酸の力で雑菌をやっつけろ!パンの日持ちが良くなる底力とは?
食品の日持ち。
これは、食べ物を作って食べる私たちの生活には欠かせない知識です。
常備菜を作る時、保存食を作る時。
『酢』の力を使って、日持ちをよくすることが多くあります。
一般的に、日常生活で登場する微生物が苦手なのは、乾燥・高温・酸・高糖度・高塩分、、、
そんなイメージかなと思います。
乾燥と高温は、まさしくパン作りでやってはいけない事ですよね。
また、砂糖や塩の量が過剰に多くなると、イーストの働きはとても悪くなります。
パン酵母も細菌なのです。
生き物を扱うのですから、基本的な考え方は同じになりますね。
話を戻しますね。
一般的に、細菌類は酸性が嫌いです。
ですから、ヨーグルトを入れたパンのpHが酸性になっていれば、
パンがカビにくくなり、日持ちがよくなるという事ですね。
ヨーグルトの中で働く乳酸菌は、乳酸や酢酸などの酸性の物質をつくりだします。
これらの『酸』がパン作りにも大きく影響しているのです。
【パン作りでのヨーグルトの効果⑤】わぁ、良い香り!乳酸菌がつくりだす香りの魅力
パンの香り。
他にはない魅力がありますよね。
お料理の香りとも、お菓子の香りとも違います。
発酵が生み出す香りの魔法。
パンの幸せの香りの中には、細菌たちの発酵の力が隠されているのだと思います。
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パンの香りの成分も色々なものがありますね。
イーストが発酵でつくる『アルコール』も、実はパンの香りの一部になっています。
良いイメージのない『アルコール臭』だと思いますが、
適度なアルコールの香りは、良いフレーバーとして私たちの五感に刺激を与えるわけです。
乳酸菌がつくる物質の中にも、パンの香りをより華やかにするものがあります。
甘い香りや、香ばしさ、そして酸の香りも
パンの香りを味わい深いものにしているのですね。
ちなみに、パンの焼きたての香りに大きく影響するのは『メイラード反応』です。
これは糖とアミノ酸がかかわる反応なのですが、
パン作りを深く知りたい方には必須の知識になります。
こちらのブログで詳しくお話していますので、ぜひ読んでみてくださいね(*^^)
【パンの材料Q&A】砂糖入りのパンがふわふわ柔らかい理由は?/パン作りの砂糖の役割を詳しく解説します
◎まとめ◎ヨーグルトを入れたパンと乳酸菌の働き
パン作りでのヨーグルトの効果について5つお話しました。
①パンのしっとり感が長持ちする
②酸味がパンの味を濃くする
③パン生地の伸びが良くなり、柔らかい食感になる
④酸の力で雑菌が繁殖しにくくなり、パンの日持ちが良くなる
⑤パンの良い香りの成分をつくる
このように、良いことばかりのヨーグルトなのです。
ただし、私が調べた論文では、サワー種の乳酸菌について研究されていました。
実際にヨーグルトを配合したパンについて研究されたものではないため、
ヨーグルトに含まれる乳酸菌がパン生地にどれくらいの影響があるかは、
実際には図れないところはあります。
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しかし、私の実感としては、
ヨーグルトを配合すると、パンの味わいは濃くなります。
そして、食感はもちもちとしっとり感が増すのです。
これらのヨーグルトの効果には、乳酸菌の働きが大きく関わっているのだと私は考えています。
パン作りと乳酸菌。
パン作りを深く知れば知るほど、この2つの関わりがおいしさの要になっていることに気づかされます。
やっぱりパン作りは深くて面白いです。
最後にこれだけは、注意してくださいね。
ヨーグルトの入れすぎは要注意。
この理由は、このブログ中にくわしく書いてあります。
ぜひ読み返してみてください(笑)
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参考資料
Meiji.net https://www.meiji.net/topics/trend20180928
藤本章人、パンと微生物、モダンメディア63巻8号2017、186
一般社団法人 全国発酵乳乳酸菌飲料協会 発酵乳乳酸菌飲料公正取引協議会ホームページ
科学でわかるお菓子の「なぜ?」
科学でわかるパンの「なぜ?」