『胚芽』のパンを作ってみたいけど、なんだか難しそう。
はじめて使う材料は、なんとなく挑戦するのに躊躇してしまうことがありますよね。
私がパン作りをはじめたばかりの頃は、
強力粉でさえも、違う銘柄のものを買う事がなかなかできませんでした。
理由は?
やっぱり、失敗したくないから。ですよね。
今や、どんな材料も一度は使ってみたいなぁと思うようになりました。
せっかく美味しいパンが焼きあがるのなら、
使わないのはもったいないですからね(^^)
今回のブログで紹介するのは、『小麦胚芽』です。
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胚芽の魅力は、何といってもその甘み。
ローストされた香ばしさがパンの風味と抜群に合うのです!
ただ、単に胚芽をパンのレシピに追加するだけでは
美味しいパンはできあがりません。
小麦胚芽をパン作りに使うときの注意点について、
くわしく解説していきたいと思います。
小麦胚芽とは?
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小麦は私たちが使うときには細かい粉状になっていますが、
収穫されるときにはお米のように粒になっています。
図1に小麦の構造を示しています。
小麦の粒は、外皮という殻に包まれています。
![ふゆき](https://atelier-epice.net/wp-content/uploads/2023/05/20221221-2215_62a41572002140ff9a7eaa1dfea5f61c-e1683936645707.jpeg)
収穫されて製粉される段階で、この『外皮』と下部にある『胚芽』が取り除かれます。
そして残るのは胚乳という白い部分。
この白い部分が、粉末状に砕かれることで小麦粉になります。
胚芽というのは、小麦の粒の中でほんの少しだけ。
たった2%くらいなのです。
この胚芽の部分には、小麦の種が芽になるための
ミネラルやビタミン、脂質などが豊富に含まれています。
とっても栄養豊富な部分である『胚芽』。
パンだけでなく、市販のお菓子にも
胚芽が入っているクッキーなどが良く売られていますよね。
『胚芽』を入れたパンの味は?
胚芽パン。めちゃ美味しいです。
全粒粉のパンは別ものです。
胚芽のパンは雑味が少なく、やさしい甘みが口いっぱいに広がります。
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そして、この胚芽の色。
こげ茶色ですよね。
製菓材料店で小麦胚芽を購入するときは、基本的にローストされているものが売られています。
私も『ロースト小麦胚芽』を購入しています。
ローストされた香ばしい香りも、胚芽のおいしさのポイントです。
パンに胚芽を入れた時、このローストされた香ばしさが最高のアクセントになります。
胚芽の甘味を引き立てる感じでしょうか。
『こうばしさ』×『やさしい甘み』
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全粒粉のパンはクセがあって苦手、、、
という方も、胚芽パンの虜になるかもしれませんよ。
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なぜ胚芽がローストされているものが多いの?
お店に売られている小麦胚芽はほとんどがロースト済みのものです。
これには理由があります。
小麦の胚芽の部分には、種が芽になるための栄養がたくさん含まれています。
例えば、脂質です。
脂質は酸化されやすく、胚芽部分には脂質を酸化する酵素が含まれています。
胚芽をローストすることで、この酸化酵素の働きをとめる事ができるのです。
また、酸化酵素の他にも胚芽の中には様々な酵素があります。
◎タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)⇒グルテンの網目を切ってしまう。
◎デンプン分解酵素(アミラーゼ)⇒小麦に含まれるデンプンを糖に分解する。
これらの酵素は、過剰に働いてしまうと
パン作りに悪影響を及ぼします。
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胚芽をローストすることで、
これらの酵素による悪影響をブロックする。
『ロースト』することには、れっきとした意味がありますね。
【胚芽をパンに入れる時の注意①】小麦粉(強力粉)の代用にはならない
胚芽は小麦の一部です。
では、パンのレシピの小麦粉と置き換えることができるのでしょうか?
答えは『No』です。
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パンが膨らむためには、小麦粉中のグルテンが必要です。
グルテンは網目状の構造をしていて、イーストが出した炭酸ガスをキャッチして風船のように大きく膨らみます。
胚芽は小麦の一部ではありますが、白い小麦粉のように弾力のあるグルテンを作ることができないのです。
実際に強力粉とロースト小麦胚芽に水を入れて練ったものがこちらです↓↓
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それぞれ10gずつを計量して、7gの水をいれました。
強力粉は丸くひとまとまりになりましたね。
一方で小麦胚芽はポソポソです。
砂のようにパラパラとしており、弾力もつながりもありません。
小麦胚芽のパンは膨らみがわるくなる
こんなポソポソの小麦胚芽が、パン生地の中に入っていたらどうなるでしょうか?
よく捏ねたパンには、網目状にグルテンが広がっています。
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図2はグルテン膜を網戸に例えています。
小麦胚芽は赤いボールです。
小麦胚芽がパン生地の中に入ると、きれいな網目状になっているグルテンに小さい穴がたくさんあきます。
すると?
穴だらけの網戸はボロボロです。
グルテンも同じように、すぐに空気の抜けてしまう弱々しい膜になってしまうのです。
グルテン膜が弱くなると、パンの膨らみがわるくなります。
そのため、胚芽入りのパンを作る時には工夫をしないと、
目の詰まったもそもそとした食感のパンになる可能性があるのです。
【胚芽をパンに入れる時の注意②】水分量!胚芽は水をよーく吸う
パンのレシピに胚芽をそのまま足したら、、?
これ。
実際に私がやってしまった失敗です。
ものすごーくパン生地が固くなります。
本当に!びっくりするくらいに弾力のあるパン生地になります。
伸びない。。
小麦胚芽は吸水量がとても多いです。
小麦胚芽10gに同量の10gの水をいれるとこんな感じになります↓↓
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やっと、まとまりました。
とはいっても、つながりはないのでポロポロしています。
強力粉は通常は60~70%くらいの水分で弾力のある状態になります。
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パンのレシピでも、全体の水分量を計算すると70%くらいのものが多いと思います。
強力粉に対して100%の水分をいれたら、やわらかくて通常は扱うことができません。
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このように、小麦胚芽はとても吸水量が多い材料です。
パン生地にそのまま入れてしまうと、もちろんパン生地は固くなります。
そして、焼きあがったパンのパサパサになってしまうのです。
もし、小麦粉の一部を小麦胚芽に置き換えたらどうなるでしょうか?
実際にはレシピによって違いますので、やってみないとわかりませんが、
小麦粉との吸水量の差を考えると、水分を調整する必要はあるのではないかと思います。
どんなパンに胚芽をいれると良いの?
胚芽パンというと、シンプルな食事パンという印象が強いのかな?と思います。
胚芽や全粒粉のように、茶色い粉のパンは脂っこい食事との相性がとても良いです。
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全粒粉の外皮の部分や、独特の風味が口の中の油を吸ってくれるようなイメージで、
食事全体のバランス感がとてもよくなります。
もともと油ものと相性の良い小麦胚芽です。
お菓子にもよく使われますよね。
バターのこってりした風味が、胚芽の香りと食感と相乗効果。
それぞれのおいしさが格段にアップします。
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胚芽を使ったパンは、シンプルなものだけでなく
菓子パンや総菜パンに使うととても美味しく食べることができます。
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ハード系のカリッとした香ばしいクラスト(パンの皮)を味わうのも最高ですね。
ふわっふわの柔らかい生地に、胚芽をいれるのもおすすめです。
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レッスンのベーシックコースでは、クリスマスに向けて胚芽入りのパンのレッスンをします。
バターと相性バツグンの胚芽を使った『塩パン』風のブール♪
小麦胚芽の旨みと甘み。
その魅力を知らないのはもったいない!!
仕上げたいパンの食感に合わせて、材料を使っていきます。
レッスンでは配合の理由についても詳しくお伝えしていきます(^^)
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参考資料
科学でわかるパンの「なぜ?」