パン作りを始めると、色々なレシピに出会います。
工程や材料をいれる順番もそれぞれです。
バターや他の油脂を配合するパンでは、
パンを捏ねる時に油脂類を練りこんでいきます。
私がはじめて通い始めたパン教室では、、
◎バターは捏ねる前のボールに、強力粉やパン酵母とともに入れていました。
→『最初から』バターを入れて捏ね始めます。
一方、次に通っていたパン教室では、、
○バターはこね始めて、生地のグルテンがしっかり出来上がってから練りこんでいきました。
→『後入れ』でバターをパン生地に練りこみます。
正直なところ、どちらのパン教室のパンも美味しく出来上がっていました。
でも、、
色々調べると、一般的には『後入れが良い!』という文章が見つかります。
うーん、どちらも美味しかったけど、、
疑問を解決するため、実際に同じ配合のパン生地で比較してみました!
目次
- 【検証】同じ配合のパン生地でバターをいれるタイミングを比較!『後入れ』or『最初から』
- 【捏ね】パン生地にバターを『最初から』いれて捏ねると、べたついてまとまりにくい
- 【一次発酵後】パン生地にバターをいれるタイミングで、捏ね上げ温度が変わる事も/醗酵時間に注意しよう!
- 【分割/成形】最初からバターを入れて捏ねたパン生地はだれて、扱いにくい/優しく扱わないと生地切れの原因に!
- 【最終発酵/焼成】パン生地にバターを入れるタイミングが『後入れ』or『最初から』で膨らみに影響はあるのか?
- 【実食】パン作りでバターを入れるタイミングが『後入れ』or『最初から』/味や食感は全く違う!!
- 【製パン理論】パン作りでバターを後入れする理由とは?
- ◎まとめ◎パン作りでバターを入れるタイミングは後入れ?最初から?
【検証】同じ配合のパン生地でバターをいれるタイミングを比較!『後入れ』or『最初から』
《配合》同じものを使用
強力粉 150g
インスタントドライイースト 1.5g
塩 3g
砂糖 15g
無塩バター 30g
水 108g
気温19℃ 湿度38%
*機械で同じ時間捏ねました。
①後入れ:バター以外の材料を捏ねる
↓グルテンが出来てから
バターを入れて捏ねる(計12分)
②最初から:全ての材料を捏ねる(計12分)
それぞれの工程で比較していきたいと思います!
【捏ね】パン生地にバターを『最初から』いれて捏ねると、べたついてまとまりにくい
①後入れ
バター以外の材料をグルテンが出来て、パン生地に弾力がでるまで捏ねました。
その後、常温に戻したバターを練り込みます。
一旦はグルテンが分裂するようにべたつきますが、そのままバターをなじませていくと、
数分で綺麗なグルテン膜が再び戻り、弾力のあるパン生地になります。
②最初から
全ての材料をボールに一緒にいれて捏ね始めます。
べたべたでなかなかまとまりません。
機械任せでこねたので、自分自身にストレスはありませんが、手捏ねだと相当苦戦すると思います(゚д゚lll)
同じ時間(計12分)捏ねましたが、触ってみるとブチブチと頼りないグルテンが出来ているように感じます。
【一次発酵後】パン生地にバターをいれるタイミングで、捏ね上げ温度が変わる事も/醗酵時間に注意しよう!
この日の気温は19℃。
一次発酵が早く終わったのは、②の最初からバターを入れたパン生地です。
これは私も予想しておらず、こね上げ温度を測っていなかったのですが、
①のバターを後入れしたパン生地は、室温と同じ温度のバターが、捏ね上げ直前に入ったために、捏ね上げ温度が②よりも低くなったのだと思います。
逆から考えると、最初からバターをいれて捏ねる場合は、捏ね上げ温度が高くなりやすいという事になります。
特に室温が高い時は注意が必要ですね!
途中でパンチを1回いれて、一次発酵が終わりました。①②でパン生地の様子が違います。
①後入れ
パン生地に張りがあり、表面がつるっと光沢があります。
②最初から
写真だとわかりにくいかもしれませんが、表面がざらついています。
また、パン生地に弾力がなく、だれています。
【分割/成形】最初からバターを入れて捏ねたパン生地はだれて、扱いにくい/優しく扱わないと生地切れの原因に!
①後入れ
グルテンがしっかりできているので、生地に張りがあります。
成形の作業性もよく、丸める時もしっかり張りのある表面になります。
②最初から
グルテン組織が弱く、生地に弾力がないため、
分割する時に生地がだれて扱いにくいです。
また、丸め作業でもしっかり張りを持たせようと
強めにパン生地を締めると表面が割れてしまいそうです。
油断すると生地切れを起こしてしまいそうな、弾力の弱いパン生地です。
【最終発酵/焼成】パン生地にバターを入れるタイミングが『後入れ』or『最初から』で膨らみに影響はあるのか?
最終発酵後のパン生地です。
配合の水分が多く、柔らかいパン生地だったので少し横広がりになっています。
②の最初からバターを入れたパン生地の方が、表面がざらついていますが、
発酵時間や膨らみの大きさには大きな差はありませんでした。
焼きあがったパン生地を比較していきます。
外から見て、焼き色や膨らみの大きさ・パンの形には大きな差はありませんね。
パン生地の断面はどうでしょうか?
①後入れ
ガス抜きが足りずに上の方に大きな気泡ができてしまいましたね(^_^;)
気泡は均一で、気泡を取り囲む膜はしっかりとしている印象です。
②最初から
ひとつひとつの気泡が小さく、
①のバターを後からいれたパン生地と比較すると、気泡を囲む膜が薄く細いです。
キメが粗いという訳ではありませんが、
パンというよりは、
グルテンの少ない気泡ができているスポンジケーキのような断面です。
実際に食べてみるとどうでしょうか?
【実食】パン作りでバターを入れるタイミングが『後入れ』or『最初から』/味や食感は全く違う!!
結果からいうと、、
特に食感は全く違います!!!
①後入れ
強力粉に国産小麦を使っている事もあり、
もっちりと弾力があります。
パン生地自体はしっかりとしているので、
噛むほどに小麦の甘みや他の副材料(バター)、醗酵の良い香りを感じます。
②最初から
びっくりするくらいに、すっと歯切れの良いパン生地です。
断面の写真の時にも同じ事を書きましたが、
クラム(内側のパン生地)は、
大げさにいうとグルテン組織の弱い、スポンジケーキのように口溶けが良いです。
口溶けが良いので、噛むほどに美味しいというよりは
口に入れたときに感じるクラフト(皮)の香ばしさやバターの香りを強く感じます。
以上のように味や食感は全く違います!!
ただ、、どちらが美味しいの??
と聞かれたら、『食べる人の好み』ですね。
正直、どちらのパンも美味しいです。
自分の求める食感次第で、
バターなどの油脂を入れるタイミングを変えるのも面白いと思います。
作業性に関して言えば、②後入れのパン生地の方が扱いやすいです。
特に『捏ねる』作業では、バターの配合が多いパン生地では
かなり苦戦すると思います。
この場合はレシピの水分量の見直しなど、色々と思考錯誤していけば
解決する事もできるのではないかと思います。
【製パン理論】パン作りでバターを後入れする理由とは?
バターなどの油脂を
捏ねる前に最初から材料と混ぜ合わせるとどうなるのでしょうか?
まずパンが膨らむために必要なグルテンはどのようにできるのかを考えます!
小麦粉に含まれるタンパク質(グリアジンとグルテニン)は水を吸収します。
*小麦粉=強力粉等 水=材料の水分(水や牛乳等)
↓
ここに物理的な力を加える。
*パン作りにおける『捏ね』の作業
↓
グルテンという網膜組織ができる!
この『捏ねる』段階で、バター等の油脂が多く入ると、
生地全体に広がるグルテン同士をブチブチと分裂する層を作り出してしまいます。
そうなると、
強固に網目状に広がっていくグルテン同士の繋がりや結合を阻止してしまいます。
つまり、、
捏ねる時に最初からバター等の油脂をたくさん入れると、
パンが膨らむのに必要なグルテンが作られにくくなる!という事になります。
(参考文献:パン作りの疑問に答える パン「コツ」の科学
NEW 調理と理論 第二版)
パン作りで捏ねる時に、バター等の油脂を後入れする理由は、
効率的にグルテンを引き出すためと考えられますね!!
◎まとめ◎パン作りでバターを入れるタイミングは後入れ?最初から?
パン作りの各工程(捏ね→一次発酵→分割/成形→二次発酵→焼成)に分けて、
バターを最初から入れた場合と、捏ねてグルテンができた後に入れる場合で比較をしました!
作業性、味や食感も大きく違いましたね。
どちらが良いかというのは、
バターを入れるタイミングは、作り手の目的によって変わると思います。
私が通っていたパン教室の先生は、
それぞれ『最初から』、『後入れ』でバターを使っていましたが、
どちらも正解なのだと思います。
両方のパン教室のパンが、美味しかったのも納得です(*^_^*)
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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