パン作りでよく起こる失敗のが、『計量ミス』そして材料の入れ忘れです。
パン生地の様子が何だかいつもと違う?
作業中に間違いに気がつくこともありますし、
焼きあがったパンを食べるまで気がつかないこともしばしばあります(^_^;)
今回のテーマは砂糖の計量間違いです。
砂糖はパンの副材料として、とっても重要です。
なぜか?
それは砂糖の役割は、単にパンに甘さをつけるだけではないからです。
砂糖の量を間違えてしまうと、イーストの発酵活動に影響してしまう事も考えられますし、
パンの柔らかさや食感も変わってしまいます!
このブログでは以下の内容についてお話していきます(^^)
◎砂糖の計量を間違えた時にまず考える事とは?
◎砂糖の入れすぎに要注意!イーストの発酵を阻害してしまう可能性も!?
◎砂糖ゼロでもパンは焼ける!
◎砂糖の量がパン生地の固さに影響してしまう理由
パンの砂糖の計量を間違えた時、まず考えるべき2つのポイント
砂糖の計量を間違えてしまった、、、
そんな時まず考えることは、『砂糖をいれた量はどれくらいか』という事です。
これは、間違えていれてしまった方の砂糖のグラムです。
例えば、10gをはかるべきだったのに30g入れてしまったという場合は、
30gの方に注目します。
その後に、砂糖のベーカーズパーセントを計算します。
ベーカーズパーセントというのは、
全体の粉の量に対して各材料は何%かというのを表した数値です。
例えば、200gの強力粉を使うレシピで砂糖が30g入った場合のベーカーズパーセント、は15%になります。
*30g÷200g=15%
次に、使っているイーストが『低糖生地用』なのか『高糖生地用』なのかを考えます。
市販のインスタントドライイーストには、
砂糖の割合が少ないパン生地に適している『低糖生地用』と
砂糖の割合が多いパン生地に適している『高糖生地用』という分類があります。
有名なサフのインスタントドライイーストは赤色と金色のものがあります。
◎サフ インスタントイースト 赤⇒低糖生地用 砂糖の割合0~12%
https://lesaffre.jp/products/10001700/
◎サフ インスタントイースト 金⇒高糖生地用 砂糖の割合5%~https://lesaffre.jp/products/10003700/
スーパーでもよく見かけるカメリアのインスタントドライイーストも高糖生地用のイーストです。
このように、パンに配合される砂糖の量が変わると、
しようするイーストの種類を変える必要が出てくるのです。
パンの砂糖の入れすぎに要注意!パンが膨らまなくなる理由とは?
パンに配合される砂糖の量によって、使用するイーストは『低糖生地用』と『高糖生地用』に分けられます。
注目するのは、それぞれの砂糖の適正割合です。
サフのインスタントイーストを例にすると、下記のように記載されています。
◎低糖生地用⇒砂糖の割合0~12%
◎高糖生地用⇒砂糖の割合5%~
つまり、この範囲を超える(下回る)量の砂糖を配合すると、
イーストに何らかの影響がありますよという事になるのです。
この写真、一見おしゃれな感じに撮っていますね(笑)
実は、かなり『リッチな配合』のパン生地を『低糖生地用』のイーストで焼いたものです。
ほとんど膨らんでいません。
生地を発酵している段階から、パンが膨らまないのが目に見えてわかりますよ。
私も『ちょっと無理な配合かなぁ、、、』と思いつつ作りましたが、案の定の結果となりました。
この経験談は、高糖生地用のイーストを使うべき配合を低糖生地用のイーストを使用したために失敗してしまったという例になります。
言い換えると、砂糖を入れすぎた時に砂糖の割合がベーカーズパーセントで12%を超えると要注意です。発酵が思うように進まない可能性も出てきます。
バターや卵など、他の副材料の影響もありますが、
実際には12%を少し超える位でしたら、私の経験上は大丈夫だろうと思います。
ここで疑問が出てきますね。
高糖用のイーストをいつも使えば大丈夫じゃないの?
いいえ。高糖生地用のイーストには砂糖の割合の下限値5%~と記載されているのです。
高糖生地用のイーストは、パン生地中の砂糖の量が多い時に
上手く働けるような仕組みを体の中に備えている細菌が選ばれます。
そのため、砂糖が少ないパン生地の中では上手く働くことができません。
結果として、パンが膨らまなくなってしまうという可能性があるのです。
砂糖の量を間違えて少なくしてしまった。もしくは入れ忘れてしまったという場合は、
高糖生地用のイーストを使用しているとパンが膨らまなくなるかもしれません。
詳しいメカニズムを知りたい方へ。こちらのブログに詳しく記載しております。良かったら参考にしてくださいね(^^)
【パンの材料Q&A】砂糖の割合で使い分ける!低糖/高糖生地用インスタントドライイーストとは?
砂糖を入れ忘れてもパンは発酵する理由とは?
前述の低糖生地用のイーストの砂糖の適正割合に注目してみてください。
砂糖の割合 0%~12%
そうなのです。万一砂糖を入れ忘れても、パン生地はちゃんと発酵します。
不思議だと思いませんか。
イーストの発酵活動はブドウ糖などの糖が原料になるはずです。
どこからイーストが発酵するための栄養源が出てくるのでしょうか?
図1にイーストのアルコール発酵についての模式図を示しました。
この中に材料に配合する砂糖はありません。
イーストがアルコール発酵をするために、直接利用するのは単糖類の『ブドウ糖』と『果糖』です。
図1の赤い点線の部分に注目してください。
この赤枠の中でブドウ糖が作られるわけなのですが、出発点はなんと、、、小麦粉なのです。
小麦粉は炭水化物の仲間ですよね。
デンプンを非常に多く含みます。
デンプンはブドウ糖が無数に連なった形をしています。
そのデンプンが酵素の力でブドウ糖まで分解されるのです。
①小麦粉に含まれるアミラーゼ
②イーストが持つマルターゼ
このように、砂糖ゼロのパン生地の中では段階的に糖の分解が行われます。
そのため、発酵に時間がかかります。
砂糖を入れ忘れた!という場合、焦らないでください。
立派にパンは発酵し完成しますので安心して大丈夫です。
ただし!発酵時間は長くかかります。
レシピ通りの発酵時間では膨らんでいなくても、じっくり待ってください。
そうすれば、ふんわりとしたパンが焼きあがるはずですよ。
(無糖のパンは特に過発酵には注意してくださいね。)
砂糖を入れすぎるとパン生地がベタつく理由とは?
砂糖の配合量が多いパンのレシピの水分量を見たことがありますか?
水分量はかなり控えめになっているはずです。
砂糖は非常に水によく溶けます。
砂糖を常温の水に入れていくと山盛りの砂糖も見事に溶けてしまいます。
そして、砂糖が溶けた水の容量は増えていきます。
となれば、砂糖が増えた分だけパンに入れる水分量も控えめにする必要性が出てきますね。
もとのレシピよりも砂糖を入れすぎた場合、
パン生地がベタベタになってまとまらなくなる事があります。
その理由は、砂糖が溶け込むことでパン生地全体の水分量が増えてしまったためと考えることができます。
このように水分量が多すぎる生地はダレてしまうため、
仕上がりのボリュームがでなくなる可能性は高いです。
ただ間違えてしまったのは事実なので仕方がありません。
実際問題として、こんな時にどうすれば良いかを知りたい方が多いですよね。
私だったらどうするかのお話をします。
手ごねが無理だったら、機械捏ねにシフトします。
ホームベーカリーやニーダーなどです。
機械は持っていない!という時は、ボールに戻して一旦休ませます。
15~20分位すると、パン生地が自然につながって捏ねやすくなります。
『オートリーズ法』という製法を応用した考え方ですが、
ベタついて捏ねにくいパン生地にはかなり有効です。良かったら試してみてくださいね。
それでも、手ごねが無理な場合もありますよね。
その時はしっかり捏ねること自体を諦めるしかありません。
ヘラを使ってボールの中で生地を返すように捏ねる⇒30分休ませる。
という工程を3回位繰り返してください。
加水の多い生地を捏ねる場合にこのような製法を行うことがあります。
時間はかかりますが、生地はつながってきますので試してみる価値はあると思います。
◎まとめ◎パンに配合する砂糖を入れすぎた/入れ忘れた時に対処法とは?
砂糖を入れすぎた場合
◎水分量が多くなり、パン生地がベタつく
◎パン生地がダレてボリュームが出なくなる
◎低糖生地用のイーストでは上手く発酵しない事がある
使っているイーストの許容を超えるような砂糖を入れてしまった場合は、
もはやパンとして膨らませる事は難しくなるかもしれません。
焦らずに落ち着いて考えてみてください。
ポイントは2つです。
①入れすぎた砂糖の割合はどれくらいか?
②低糖生地用と高糖生地用のイーストのどちらを使用しているか?
砂糖を入れ忘れた場合
◎高糖生地用のイーストでは膨らまない事がある
◎水分量が少なくなり、パン生地が固くなる
◎イーストの栄養源の砂糖がないため、発酵に時間がかかる
砂糖ゼロでもパンは完成します。
砂糖を入れ忘れた時の注意点は発酵の見極めです。
砂糖を入れたパン生地よりも長い時間がかかるだろうという予測を立てて、
パン作りに取り組んでみてください。
もともと砂糖を配合しない甘味が少ないパン生地です。
バターや卵、乳製品などの副材料が少ない場合はパン生地自体が味の勝負になります。
発酵不足・過発酵にならないように、発酵の見極めにいつも以上に気を使う!というのが砂糖を入れ忘れた時のポイントだと思います。
皆さんのパン作りの手助けになれば嬉しいです(^^)
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参考資料
科学でわかるパンの「なぜ?」
パンづくりのメカニズムとアルゴリズム