赤サフと金サフってなに??
製菓材料店やスーパーでも色々な種類のものが売っていますね。
メーカーによって香りや発酵具合にも違いがあり、
自分の好みや使いやすさなどで選んでいる方も多いと思います。
ところで、インスタントドライイーストには、
低糖生地用又は高糖生地用といって、パン生地中の砂糖の割合で使い分ける必要があるのです。
①低糖生地用インスタントドライイースト
砂糖の割合が少ないハード系のパンや、シンプルな食パンに適している。
②高糖生地用インスタントドライイースト
砂糖の割合が多い菓子パン、ブリオッシュなどのソフトなパンに適している。
【イーストとは?】パン作りのために自然から分離されて培養された酵母 低糖/高糖生地に強いなど個性も様々!
そもそも、イーストというのは細菌の一種です。
酵母は英語でイースト。数多くの酵母の総称です。
この自然界に存在している数多くの酵母の中で、
昔から人間がパン作りに使用してきたのが、
生物の分類では
サッカロミセス属のサッカロミセス・シルヴィシエ種
という種の細菌です。
そして、サッカロミセス・シルヴィシエ種の中にはさらに数多くの酵母が存在します。
ワイン酵母やビール酵母もアルコール発酵をしますが、
これらの酵母もサッカロミセス・シルヴィシエ種の酵母のひとつです。
酵母ひとつひとつにも個性があって、特技を活かして仕事をしています。
パン作りに使われるイーストは、サッカロミセス・シルヴィシエ種の酵母の中で、
パン作りが得意な酵母を自然界から分離し、培養しているものです。
『イースト』という表現は人工的なイメージを抱きやすいですが、
自然界から人間が見つけ出した、パン作りのための選抜メンバーという事になります!
そのため『イースト』と、ひとまとめにしていますが、使っている酵母の種類は
メーカーによっても様々です。
風土が違えば、酵母も違います。
日本で見つけ出された酵母と、ヨーロッパで見つけ出された酵母は別の性格を持っています。
低糖生地用/高糖生地用のイーストも、
数多くの酵母の中から性格の違う酵母を選び出して、
人間の都合で使い分けている、、というイメージです。
砂糖の割合が少ないパン生地に使う!低糖生地用インスタントドライイーストについて
パン酵母(イースト)は糖を分解してアルコールと炭酸ガス(CO2)を発生します。
これを発酵と言います。
詳しくは【パン作りの失敗】一次発酵でパン生地が膨らまない!原因と対策は?の発酵についてをお読みくださいね(^^)/
イーストは糖を分解する酵素を2つ持っています。
①マルターゼ
②インベルターゼ
ここでは、①のマルターゼに注目したいと思います。
マルターゼは麦芽糖を分解して、ブドウ糖を作る酵素です。
材料に砂糖が含まれていないパン生地の中で、
イーストがどのように発酵を行うのかを考えてみます。
材料の砂糖がないという事は、イーストの栄養源となるショ糖がありません。
となると、イーストが利用できるのは赤線で囲んだ麦芽糖です。
でも、麦芽糖ってパンの材料にありますか?
ない、、ですね。
どこから麦芽糖ができるか、、というと。
材料の『小麦粉』です。
小麦粉の中にはデンプンが多く含まれます。
デンプンは、小麦粉の中にある【アミラーゼ】という酵素によって麦芽糖に分解されます。
小麦粉の中のデンプン→【アミラーゼ】→麦芽糖
ちなみに、ハード系のパンを作るときに使う『モルトエキス』。
これは発芽した大麦をに出して作る、麦芽糖の濃縮エキスです。
モルトエキスの中には麦芽糖とアミラーゼも含まれていて、パンの発酵を手助けしています。
小麦粉のアミラーゼによってできた麦芽糖ですが、
イーストが発酵に使うことができるのは、ブドウ糖や果糖です。
二糖類である麦芽糖を、イーストはそのまま利用する事ができません。
そのため、イーストが持つ酵素のマルターゼによって麦芽糖を分解してブドウ糖を作ります。
麦芽糖→【マルターゼ】→ブドウ糖
そして、このブドウ糖を利用してイーストが発酵を行い、炭酸ガスとアルコールが発生します。
つまり、低糖生地用のインスタントドライイーストには、
このマルターゼの働きが強い酵母が選ばれています。
主に、低糖生地用のインスタントドライイーストは、
ヨーロッパを中心に繁殖している酵母です。
例:サフ インスタントイースト 赤
砂糖の割合が多いパン生地に使う!高糖生地用インスタントドライイーストはインベルターゼの活性が低い!
次に高糖生地用のイーストの特性について考えたいと思います。
高糖生地用のイーストはインベルターゼ活性が低いものが選ばれます。
なぜか?
もう一度、イーストの発酵の仕組みについての図を見てみましょう。
砂糖(ショ糖)は二糖類と言って、ブドウ糖と果糖がくっついている構造をしています。
ショ糖⇒【インベルターゼ】で分解⇒ブドウ糖+果糖
という事は、ショ糖が分解すると、ブドウ糖と果糖ができるわけで、、、
浸透圧は2倍!!になります。
ここでもうひとつ面白いポイントがあります。
イーストはインベルターゼを細胞の外側に放出しているのです。
という事は、、、
インベルターゼの活性が高いと、細胞の外側でブドウ糖と果糖が大量生産されて、、、、、
イーストの細胞の内部の水分が奪われて縮んでしまいます。
結果として発酵活動がスムーズに進まなくなってしまうのです。
もう一度いいます!!
高糖生地用のイーストはインベルターゼ活性が低い!
ショ糖分解酵素であるインベルターゼの働きが強いと勘違いしている場合が多いです。
私もそのひとりでした。
その部分は十分に注意してくださいね。
【浸透圧に強い】高糖生地用インスタントドライイーストの特徴
そして、もうひとつ!
『浸透圧』について考えてみたいと思います。
浸透圧とは??
イーストは生きている細菌で、細胞膜で囲まれています。
このイーストの周りに砂糖がたくさん入った水をかけます。
↓
細胞膜で隔たれたイーストの体内の水分濃度と、
外側の濃い砂糖水の濃度に差ができます。
↓
この浸透圧が生じると
イーストの中の水分が、濃度の高い砂糖水の方向抜けていってしまいます。
日常でよくある例だと、野菜に塩をかけると水が出てくる事も
浸透圧によるもののひとつです。
高糖生地用のイーストは、この浸透圧に対して耐久性がある酵母が選ばれます!
例:サフ インスタントイースト金
スーパーカメリアドライイースト
白神こだま酵母ドライ
低糖・高糖生地用のインスタントドライイーストの使い分けについて/砂糖の配合はどれくらいなのか?
サフのインスタントドライイーストを例にして考えます。
日仏商事株式会社の商品の紹介ページによれば、
サフ インスタントイースト赤
https://www.nichifutsu.co.jp/products/foods/saf_iyr/#subcategory-216
パン生地の砂糖の割合はベーカーズパーセントで0~12%
(材料の小麦粉100gに対して砂糖が0g~12g)
サフ インスタントイースト金
https://www.nichifutsu.co.jp/products/foods/saf_iyg/
パン生地の砂糖の割合はベーカーズパーセントで5%~
(材料の小麦粉100gに対して砂糖が5g~)
砂糖の割合が重なっている部分もありますが、
パン生地の砂糖の割合が10%以上になる場合は
高糖生地用のインスタントドライイーストを使う事を勧めている場合が多いようです。
経験上、砂糖の割合が表示通りのベーカーズパーセントで12%までなら、
低糖生地用のイーストで問題なく発酵してくれますし、ふっくらとしたパンが焼き上がります!
高糖生地用のインスタントドライイーストであっても、砂糖の量が増えてくると発酵のスピードは遅くなります。
いくら浸透圧に強いといっても、細菌は最近です。
砂糖の量がベーカーズパーセントで20%を超えるようなパン生地の場合は、
イーストの量を増やすなどの調整が必要になります。
◎まとめ◎パン生地に配合されている砂糖の割合を知って、低糖・高糖生地用のインスタントドライイーストを使い分けよう!
イーストは自然に生きている多くの酵母の中から、
パン作りに最適なものを分離して培養した生きている細菌です。
①砂糖の割合が少ないパン生地をよく発酵させる酵母
⇒低糖生地用のインスタントドライイースト
*ハード系やシンプルな食パンが得意
②砂糖の割合が多いパン生地をよく発酵させる酵母
⇒高糖生地用のインスタントドライイースト
*ブリオッシュや菓子パンなどのソフトなパンが得意
それぞれの酵母に得意分野あります。
苦手な事を無理やりやらせるのはイーストにとっても苦しいですし、
結果として完成したパンも期待通りにはなりません。
それは人間も同じですよね~。
それぞれの得意分野を活かして仕事ができれば最高ですよ(*´∀`*)
市販のインスタントドライイーストには、たくさんの種類があります。
味や香りもそうですが、
どんな配合のパン生地を作りたいかで使う酵母を選ぶ事もとっても大切です!!
皆さんのパン作りの手助けになれば嬉しいです(^^)/
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参考文献
パン「こつ」の科学
パンづくりの失敗と疑問をスッキリ解決する本
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パンづくりに困ったら読む本
日仏商事株式会社ホームページ
社団法人 日本パン技術研究所 天然酵母表示問題に関する見解
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