パン作りでよくある失敗のひとつが
『材料の入れ忘れ』です。
小麦粉と水を忘れる事はほぼないと思いますが、
砂糖・塩・イースト・バターなどの材料を入れ忘れた(゚ロ゚)という経験は誰でもあると思います。
私も色々やってますよ(笑)
一度失敗しても、繰り返してしまうのが『材料の入れ忘れ』かもしれませんね。
バターは最初から他の材料と混ぜて一緒に捏ね始めるよりも、
ある程度捏ねてから『後入れ』する事が多いと思います。
そのため、バターを計量したのに、、ポツンと残っていることがあります(^_^;)
今回のブログでは
◎バターを入れ忘れたらパンはどうなる?
◎パン作りでのバターの役割
◎バターを入れ忘れた時の対処法
についてわかりやすく解説していきたいと思います(^^)
【バターの役割】バターを配合するとどんなパンに焼きあがるのか?
パンの種類によっては、バターなどの油脂類を入れるものと入れないものがあります。
代表例をあげると、
◎バケット、カンパーニュ⇒油脂を入れない
◎菓子パン、バターロール、食パン⇒油脂を入れる
例外はありますが、一般的には上記のような代表例が挙げられると思います。
バターをいれたパンの例として、バターロールの断面を見てみましょう!
第一印象として、
◎ふんわりしている
◎皮(クラフト)が薄い
そのようなイメージでしょうか。
これらはバターだけの効果ではありませんが、
まさしく上記のようなものがバターを配合したパンの特徴になります。
バターには、パン生地の伸びを良くする役割があります。
そのため、
成形などの作業中もパン生地がよく伸びて扱いやすく、
生地の伸びが良いため、オーブンの中で膨らみがよくなります。
オーブンの中でパン生地がよく膨らむと、
◎ふんわりと柔らかいパンになる
◎皮(クラフト)が薄くなる
◎食感が軽く、口溶けがよくなる
という特徴のあるパンが焼きあがります。
そして、もうひとつ大切な役割があります。それは、、
焼きあがったパンが時間が経っても硬くなりにくくなる。
これも経験があると思います。
バケットなどの油脂を配合しないパンは、焼きあがった当日は中もしっとり美味しいですが、翌日には硬くなってしまいます。
一方で、食パンやバターロールは翌日になっても柔らかいままですよね。
これは、バケットが悪いのではなく、パンとしての特性です。
バターなどの油脂には、パンを硬くなりにくくし保存性を良くする役割があります。
さて、なぜバターなどの油脂を入れると、翌日も硬くなりにくい日持ちのするパンが焼きあがるのでしょうか?
それは、水と油の関係を考えるとわかりやすいです。
油は水をはじきます。
油(バター)がパン生地の中に配合されると、油が水を通さないためにパン生地の水分の蒸発を抑えて、乾燥を遅らせる事ができるのです。
そのため、バターを配合したパンは翌日も柔らかさが持続するのです。
バターの役割については、こちらのブログにも詳しく記載しています(^^)ぜひ参考にしてくださいね♪
【パン作りの豆知識】バターの代用にサラダ油を使って良いのか?
バターなしのパンはどう焼きあがる?
パン作りにおけるバターの役割が理解できれば、
その逆を考えるとバターなしのパンがどう焼きあがるのかを想像する事ができます。
バターの役割を3つに分けて考えていきますね。
①パン生地の伸びを良くする
②時間が経ってもパンが硬くなりにくくなる
③バターの香りがついて、風味が増す
上記の2点の逆を考えていきますよ!
①バターなしのパンはパン生地の伸びが悪くなる
パン生地の伸びが悪くなると、どのような影響があるでしょうか?
まず、オーブンの中でパン生地の膨らみが悪くなります。
その結果として、
◎パンのボリュームが小さくなる
◎ふんわり軽い食感ではなく、むっちり噛みごたえのある食感になる
◎皮(クラフト)が厚くなる
◎皮(クラフト)に亀裂が入って、形がゆがむ
このような影響が考えられます。
また、成形などの作業中もパン生地の伸びが悪くなると考えられます。
パン生地を無理に伸ばそうとすると、生地が傷みますので注意しましょう。
②バターなしのパンは日持ちが悪く、早く硬くなりやすい
油脂にはパンの乾燥を防ぎ、パンの柔らかさを持続させる働きがあります。
そのため、バターを配合しないパンは硬くなりやすくなります。
③バターなしのパンは小麦粉(他の材料)の風味を強く感じる
パンの材料の中で乳製品と卵はとても香りが強く、
焼き上がりのパンの風味として強い印象があります。
バターなしのパンは、もちろんバターの風味はしません。
牛乳などの他の材料も配合しない、
シンプルな配合のパンであれば、小麦粉の風味が活きた味わいになると考えられますね。
今回は、単純にバターの役割だけに注目して、
バターなしのパンにどのような特徴があるかをまとめています。
実際には、その時の配合やその日のパン生地のコンディションによって、
焼きあがりが変わってくると思います。
実際には焼いてみないとわからないという事になりますが、
もとのレシピとは同じパンにならないという事は確かです。
バターを入れ忘れた!!時の対処法
ここからは、バターの入れ忘れに気がついた時の対処法について考えてみましょう。
私ならこうするというものをご紹介しますので、
他の方法がある!という方はぜひ教えてくださいね。
入れ忘れに気がついたタイミング別にお話します。
①捏ね上げた直後の一次発酵の前に気がついた場合
捏ね上げた直後でしたら、まだ間に合います。
すぐにバターをパン生地に練りこんでください。
バターはパン生地を捏ねて、ある程度の量のグルテンが作られてから生地に練りこんでいきます。
捏ね上げた直後だと、タイミングとしては遅いかもしれませんが、
バターがきちんと馴染む状態まで捏ねて、
必要以上に捏ねなければ『捏ねすぎて失敗』にはならないはずです。
②一次発酵が始まった後に気がついた場合
発酵を開始したパン生地にバターを練りこむことはできません。
もうレシピと同じ配合のパンを焼く事は諦めましょう。
一次発酵が始まってからは、パン生地をできるだけ傷めないように作業する事が
パン作りの鉄則です。
ましてや、パン生地を引きちぎってバターを練りこむなんて事はできません。
では、どうするの?
という所が大切です。
まず大前提として、世の中には油脂を配合しないパンがあります。
そのため、きちんと工程をこなせばパンとして美味しいものを焼き上げる事ができます。
という事は、油脂(バター)なしのパンを、ふっくら膨らませるためにする
工夫をしたら良いと思います。
具体的には、焼成の時にクープを入れる事とそして霧吹き(蒸気を入れる)をする事です。
ハード系のパンは、小麦粉・水・イーストという最小限の材料で作られています。
砂糖やバターの他の乳製品も配合されていないため、
オーブンの中での膨らみは悪くなります。
その膨らみを助けるのが、クープと霧吹きです。
ここでは簡単に説明をしますね。
パン生地に霧吹きをして、オーブンで焼く時にパン生地の表面が濡れている状態を作ります。
すると、オーブンの熱でパン生地の表面が焼き固まるまでの時間が長くなります。
その結果、霧吹きをしないよりもパンの膨らみが良くなり、ボリュームが大きくなります。
クープというのは、パンにナイフなどで切り込みを入れる事を言います。
クープを入れると、その部分から自然にパンの皮の部分が開いています。
ちょうどウインナーに切り込みを入れるのと、同じイメージです。
クープが開くことで、パンの膨らみを助けます。
さらに、バターなしの伸びの悪いパン生地の皮(クラフト)が割けて、
亀裂が入ったり、パンの形が歪む事を防ぐことができます。
クープと霧吹きについては、バターの他にパン生地の伸びを良くする油脂や卵が含まれている場合には必要ではないかもしれません。
もし、バターを入れ忘れた事でハード系に近いシンプルな配合になってしまうようならば、
試してみる価値はあると思います。
高温で焼くと、皮(クラフト)がパリっとした美味しいパンに焼きあがると思いますよ。
クープの効果についてはこちらのブログに詳しく記載しています♪
【失敗の原因】パンが横割れ、、クープを入れる意味は??
③日持ちせずに硬くなりやすい
日持ちがしにくいバターなしのパンは、その日のうちに食べましょう!
もし、食べきれない場合は即冷凍です。
冷凍してしまえば、パンが硬くなるのをある程度防ぐことができます。
解凍して温め直せば、焼いたその日の食感には敵いませんが、美味しく食べることができるはずです。
◎まとめ◎バターの入れ忘れに気がついたら、、焦らずに全力で別の美味しいパンを焼きましょう!
バターの入れ忘れた場合のパンには、以下のような影響が考えられます。
◎パンの膨らみが悪い
◎パンがむっちり噛みごたえのある食感になる
◎皮(クラフト)が厚くなる
◎パンに亀裂が入り、形が歪む
◎時間が経つと硬くなりやすくなる
◎バター風味がなくなるため、小麦粉(他の材料)の味わいが強くなる
先にも書きましたが、油脂(バター)なしのパンも美味しく焼き上げることができます。
忘れてしまったものは仕方がありません。
パン作りの工程のひとつひとつをきちんと行う。
そうすれば、結果として美味しいパンを焼きあげる事ができます。
パン作りの工程は、配合は違っても基本的には同じです。
焦らずに基本に戻って、目の前にあるパン生地を美味しいパンに育ててあげて下さいね(^^)
西東京市パン教室 アトリエエピス 井手芙雪(いでふゆき)
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参考資料
科学でわかるパンの「なぜ?」
パンづくりの失敗と疑問をスッキリ解決する本
パンづくりのメカニズムとアルゴリズム