【パンの材料Q&A】砂糖入りのパンがふわふわ柔らかい理由は?/パン作りの砂糖の役割を詳しく解説します

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メロンパン、クリームパンのパン生地は甘くてふわふわです。
明らかに食パンやバケットとは違います。
このような食感の違いはなぜでしょうか?

パンの基本材料は4つです。
さて、、、4つとは何の事でしょう?

答えは、小麦粉・イースト(パン酵母)・水・塩 です。

食パンやバケットにも基本的にはこの4つは必ず使います。

では、メロンパンやクリームパンなどのふわふわで柔らかいパンの材料を思い出してみましょう。
上記の4つの材料以外に、どんな材料があるでしょうか?

例えば、砂糖・卵・バター・牛乳などです。
これらのものは、パン作りにおいては【副材料】として基本材料とは分けて考えていきます。

たくさんのレシピを作っていると、
ふわふわの柔らかいパン生地のレシピは砂糖や牛乳などの【副材料】が含まれている。
という事がわかってきます。

今回はこれらの副材料の中で、最も使われる事の多いであろう砂糖に注目していきます。
このブログでは以下の疑問が解決できるよう、わかりやすく解説していきますね♪

◎ただ甘いだけじゃない!?パン作りの砂糖の役割
◎焼き色バッチリ香ばしい。オーブン焼成での砂糖の効果
◎ふわふわ柔らか食感をキープする。砂糖の保水性とは?

【砂糖の役割①】パンを甘く、味付けをする

甘い。

これは、だれもが思う砂糖の味だと思います。
もちろん、パンに砂糖を入れるとパンが甘くなります。

『甘味をつける』というのはパン作りにおける砂糖の重要な役割のひとつです。

ただ、食パンってそんなに甘くないですよね。
食パンなどの食事パンの家庭用のレシピをみると、たった数グラムの砂糖が配合されているものもあります。

これだけで甘さを感じる?
という疑問も湧きますよね。

そうなのです。砂糖はただパンに甘味をつけるためだけのものではないのです。

ところで、『砂糖の味』について考えたことがあるでしょうか?

パン作りで使うことが多いのは白色の砂糖です。

日本の家庭では一般的な上白糖。
そして、お菓子作りにもよく使うグラニュー糖も白色の砂糖のひとつです。

懐かしい味の『黒糖パン』。

これはまさしく、砂糖で味付けをしたパンの代表選手です。

黒糖やきび砂糖などはミネラルなどが多く含まれていて、茶色っぽい色をしていますね。
これらの砂糖を食べてみると、『甘い』とは別のコクのある後引く味があります。

日本で使われる砂糖は本当に種類が多いです。

一概に黒糖と言っても、産地などによって味や香りは違いますよね。

砂糖を選ぶことで、パンの風味付けとする。
副材料の砂糖には、味つけの面でも面白い使い方ができるのです。

【砂糖の役割②】パン生地がしっとり柔らかい食感になる

『甘いパン生地=柔らかい』

例外はあると思いますが、一般的にはこのイメージは間違いではないはずです。

この砂糖がもつ『パン生地を柔らかくする』という役割は、
パン作りにはとっても大切です!

そのメカニズムに迫っていきたいとおもいます。

ここ!超重要なポイントです。

砂糖は水に溶けますか?

『当たり前でしょー。山盛りの砂糖も水に溶けるよ。』

その通りです。砂糖は水に溶けます。
それは、砂糖の分子構造が水と仲良しだからです。

砂糖には、水と結びついて(吸湿性)、離さない(保水性)という親水性という特徴があります。

この2つの特徴があるからこそ、砂糖を配合したパンはしっとり柔らかく仕上がるのです。

パンの材料の中で、砂糖の他にも水と仲良しの性質を持つものがあります。

前述の基本材料の中では小麦粉、そして塩です。

イメージしていただくとわかりやすいと思います。
塩は砂糖と同様に水によく溶けますね。
科学的にみると、塩はNaClです。水に溶けるとNa+、Cl-というイオンになります。

小麦粉はパンの骨格を作るグルテンを作り出す材料です。

パンの材料の小麦粉と水を混ぜて捏ねると、グルテンという膜状の組織ができます。

パン作りで『捏ねる』という作業があるのは、小麦粉のタンパク質からグルテンを作り出すためなのです。

さて、パンを捏ねる時に材料に水を加えて混ぜていきます。
この時、小麦粉、塩、砂糖などの水と仲良しの材料は、競争して水分子を取り合います。

という事は、砂糖が多くある方が小麦粉のタンパク質が水と結びつく可能性は低くなるということがわかりますね。

グルテンを作りだすためには、水が絶対に必要です。
そのため、砂糖が配合されたパン生地では砂糖が含まれないパン生地よりも、
出来上がるグルテンの量は少なくなります。

グルテンはバネのような弾力のある組織ですので、
砂糖が含まれることでその弾力が少し抑えられます。
以上のようなメカニズムで、砂糖が配合された場合、伸びやすく柔らかいパン生地になるのです。

伸びやすいパン生地はオーブンの中でもよく膨らみ、ふんわりしたボリュームのあるパンが焼きあがるのです。

もうひとつ、砂糖には『保水性』という水と結びついたまま離さないという性質があります。

保湿、保水という言葉を聞くと化粧品を思い出しますね。
砂糖はパン生地を保湿して、水分を保持してくれるのです。

オーブンの中でパン生地が焼かれると、パン生地中の水分が蒸発していきます。
保水性のある砂糖は、水分子と強く結びついていて簡単には手を離しません。

そのため、砂糖が配合されたパン生地には砂糖と結びついた水分が多く残ることになります。
以上のことから、しっとりとした食感になると考えることができます。

【砂糖の役割③】パンが翌日までふわふわで柔らかい食感をキープできる

ここでも、キーワードは『砂糖の保水性』です。

翌日のパンが固くなるのはなぜでしょうか?

この答えは、単にパンが乾燥するからだけではないのです。

炊きたてのご飯はとても柔らかいですが、冷蔵庫にいれておくとカピカピに固くなります。
これと同じことがパンでも起こります。

図にデンプンの構造を示しました。

米や小麦粉にはデンプンが多く含まれます。
デンプンは水と一緒に加熱されると、デンプンの構造の中に水分子を取り込んでゆったりとした構造になります(図の真ん中)

このようにデンプンが柔らかい状態に変化する事を糊化(コカ)又はα化と呼びます。

固い生米を、炊飯器で炊くともちもちの粘り気のあるご飯になっている状態です。

一旦やわらかい状態になったデンプンですが、時間が経つと水分が抜けていきます。
すると、もとの密なデンプンの構造に逆戻り。
完全にもとの構造になるわけではありませんが、食感としては固くなっていきます。

これをデンプンの老化(ロウカ)又はβ化と呼びます。

焼きあがったパンも、焼きたてはデンプンがα化して柔らかい状態です。
しかし、時間の経過に従ってデンプンがβ化し、固くなってしまいます。

これは、ある程度は仕方のないことです。

しかし、材料や工程を工夫する事で、デンプンのβ化を遅らせることができます。
すなわち、翌日まで柔らかい食感をキープするパンを作ることができるのです。

今回は砂糖の役割のみにポイントを絞っていお話しますね。

前章でもお話した通りに、砂糖には『保水性』という性質があります。

砂糖などの糖類*は水と仲良しです。
糖類と水が結びついた状態で、デンプンの構造の中に取り込まれていきます。

デンプンのβ化は、デンプンの構造から水分子が抜けていくことで起こります。
しかし、保水性のある糖類は簡単には水分子と手を離しません。

その結果として、デンプン構造の中に水分が残りやすくなり、デンプンのβ化を防ぐことができます。
すなわち、砂糖が配合されたパンは、翌日になっても固くなりにくいふわふわの食感を保つことができるのです。

*厳密にいうと、砂糖というのはショ糖のことを表しています。パン生地の中では酵素によってショ糖が分解されたブドウ糖や果糖も含まれます。果糖は特に吸湿性が高く、保水力があります。今回はこれらをまとめて、『糖類』として記載しています。

【砂糖の役割④】イーストのアルコール発酵の栄養源になる

パン作りにおけるイーストの役割は何でしょうか?

イーストはアルコール発酵を行って、炭酸ガスを発生します。
この炭酸ガスがグルテン膜に包まれて、パン生地が風船のように膨らみます。

イーストのアルコール発酵では、ブドウ糖と果糖が栄養源になります。

材料の砂糖の主成分はショ糖という糖類です。
ショ糖はイーストがもつインベルターゼという酵素によって分解されて、ブドウ糖と果糖になります。

このように酵素で分解されることで、材料に加えた砂糖はイーストのアルコール発酵の栄養源として働きます。

材料に砂糖があると、イーストは早い段階で活発にアルコール発酵を行います。
そのため、適正量の砂糖が配合されたパン生地は膨らみやすく、安定してアルコール発酵をすすめることができるようになります。

『適正量』というのが大事なところです。
イーストは細菌ですので、たくさんの砂糖が存在する環境では活性が弱まってしまします。

詳しくはこちらのブログに記載していますので、よかったら参考にしてくださいね。
【パンの材料Q&A】砂糖の割合で使い分ける!低糖/高糖生地用インスタントドライイーストとは?

【砂糖の役割⑤】パンに焼き色をつけるメイラード反応とカラメル化反応

オーブンに入れたらパンは焦げて焼き色はつくでしょ!!

と思いますよね。
私も初心者の頃はそう思っていました。

でも、パンの焼き色問題はとてもとても奥が深いのです。

こんな経験はありませんか?

かなり高温で焼いているのに、パンに焼き色がつかない。
オーブンの性能に問題がないとしたら、この原因はパン生地自体にあります。

さまざまな要因が考えられますが、多い原因としては『過発酵』ではないかと思います。

過発酵についてはこちらのブログに詳しく記載していますので、今回は簡単に説明しますね。【検証】一次発酵で過発酵になったパンを焼いてみると、、、/過発酵について詳しく解説!
【検証】二次発酵(最終発酵)が不足/過発酵になったパンを焼くと、、、

なぜここで過発酵についてお話したかというと、焼き色にはパン生地に含まれている糖分の量が関係しているからです。

イーストはパン生地中の糖分を利用して発酵活動を行います。
過発酵になったパン生地の中では、イーストが糖分を使い尽くしてしまいます。
その結果、パン生地の中には糖分がほとんど含まれていない状態になってしまいます。

砂糖にはパンに焼き色をつけるという大切な役割があります。
綺麗な焼き色がついたパンは、香ばしく食欲をそそる風味がつき、人間が美味しいと感じるもとになります。

パンの焼き色がつくメカニズムは、以下の2つの反応が関係しています。

◎メイラード反応
◎カラメル化反応

メイラード反応というのは、アミノーカルボニル反応ともいわれ、糖とタンパク質やアミノ酸が関わる反応のことです。
パンの材料の中に含まれる糖とアミノ酸が、オーブンで加熱されて起こります。

メイラード反応が起こることで褐色の物質(メラノイジン)が作られて、パンの焼き色と香ばしい風味が付きます。


何のこっちゃだと思いますので、要点をできるだけわかりやすくお話しますね!

アミノ酸というのは、タンパク質を作るもとになっているものです。
パンの材料でいうと、タンパク源は小麦粉や卵、牛乳などですね。

糖も色々な材料に含まれていますが、やはり代表例はブドウ糖などの糖類です。

ただし、ここで注意しなければならないのは、メイラード反応に関わるのは糖類のうちで『還元糖』に分類されるものだけなのです。

還元糖??

難しい用語がでてきましたね。ここは読み飛ばしても大丈夫ですが、理解できると深い知識になりますので諦めずに学んで頂けたらと思います。

還元糖というのは、還元基と言われるアルデヒド基(-CHO)やケトン基(-C=O)などの還元基とよばれる部分をもつ糖の事を言います。

還元糖についての詳しい理論的な部分は難しいので、代表例を覚えてしまう方が楽だと思います。

糖類の中で単糖類のブドウ糖や果糖などは還元糖になります。
二糖類の一部、麦芽糖なども還元糖です。

注意したいのは、砂糖の主成分であるショ糖は還元糖ではないという事です。

ショ糖は二糖類で、ブドウ糖と果糖がくっついた構造をしています。
そして、ブドウ糖と果糖が手をつなぐ時に、両者の還元基同士が手をつないでいるのです。
そのため、ショ糖は還元基を持たず、還元糖ではないという事になります。

◎還元糖:ブドウ糖、果糖、麦芽糖、乳糖など

◎非還元糖:ショ糖(砂糖の主成分)など

以上のようにパンの材料の中にはメイラード反応を起こす『アミノ酸』と『還元糖』が含まれています。

砂糖(ショ糖)は還元糖ではありませんが、分解されるとブドウ糖と果糖になるため、メイラード反応に関わってきます。

パンの場合、メイラード反応は130~160℃で多く生じるようです。

結構低い温度ですよね。
アミノ酸やタンパク質は小麦粉に含まれていますので、パン生地中に『還元糖』になる糖類が含まれていれば、メイラード反応が生じることがわかります。

*メイラード反応については下記のホームページも参考にさせていただきました。

農林水産省ホームページhttps://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/guide.html

株式会社林原 食品素材事業サイトhttps://www.food.hayashibara.co.jp/sugar/

独立行政法人農畜産業振興機構ホームページhttps://sugar.alic.go.jp/japan/view/jv_0106a.htm

さて、もうひとつパンの焼き色をつける反応であるカラメル化反応についてお話しますね。

これは読んで字のごとく『カラメル』を作る反応です。
プリンのカラメルと同じ事です。

砂糖を加熱して、180℃~190℃になるとカラメル色に色付きます。

パンをオーブンで加熱して、パン生地の温度が高温になるとカラメル化反応が進み、焼き色と香ばしい風味が付きます。

メイラード反応とカラメル化反応を比較すると、カラメル化反応は高温のオーブンでないと起こらないという事がわかります。

また、カラメル化反応は糖類だけあれば起こります。
アミノ酸と糖類の2つが必要なメイラード反応とはこの点でも異なりますね。

ちなみにメイラード反応は、食品が加熱される様々な場面で起こっています。
有名なところだと、お肉を焼いた時の焦げ色や香りなどもメイラード反応が関わっています。

そのためお菓子やパン作りだけでなく、お料理でもメイラード反応とカラメル化反応の知識は大切です。


知っていると、どんな時に焦げやすいのか?焼き色がつかない理由は?など、失敗の原因を探ることもできます。

そして、これがイチバン重要ですかね。
何より、焼き色と香ばしい風味は『美味しそ~』という、食欲をそそる大切な要素です。
パンを焼く時の良い香り、パン屋さんに入った時のあの香り。
この香りを出せるか出せないかは、パン生地作りとオーブンを使いこなせるかにかかっています。

美味しさに直結する、メイラード反応とカラメル化反応。
とても面白いですよね(^^)

◎まとめ◎パン作りの砂糖の役割は超大切!食感や日持ちにも影響する

パン作りにおける砂糖の役割は甘さをつけるためだけではありません。

私も、今回お話した砂糖の役割を活かすために、少量の砂糖を配合してレシピを作ることがよくあります。
家庭用のレシピで言えば、10g前後の砂糖がこれほど多くの役割を果たしているというのは、感心しますよね。

人間の栄養も糖分ですが、イーストも生き物です。
砂糖の役割が非常に大きいことも頷けます。

私はお菓子作りも良くしますが、パン作りの砂糖の役割はお菓子におけるそれとは一味違う面白さがあります。

このブログでは、少し難しい科学的な内容まで詳しく解説しました。
マニアックな内容かもしれませんね(*^_^*)

深く知れば知るほど面白いのがパンの世界です。

皆さんのパン作りの手助けになれば嬉しいです♪

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参考資料
パンづくりのメカニズムとアルゴリズム
科学でわかるパンの「なぜ?」
NEW 調理と理論 第二版