【検証!】塩なしパン VS 塩ありパン /パン作りでの塩の効果とは?

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塩分を控えたいから、パンに塩入れなくても大丈夫かな?
他の材料も入ってるし、塩がなくても良いか。。。

塩なしパン(無塩パン)

健康の面でも、塩分を控えたいと思う方は多いと思います。
ただでさえ、主食であるパンです。
毎日食べるものなら、尚更そう思うのは自然なのかもしれません。

では、、塩がなくてもパンは作れるのか?

実際に作って検証してみました。

塩を全く配合しない『塩なしパン』と一般的な配合割合で塩を加えた『塩ありパン』。

◎発酵の具合は?
◎作業中のパン生地の状態は?
◎焼き上がりの見た目と味は?

塩以外の配合が同じパン同士を比較し、塩の効果について解説していきたいと思います!

【捏ねたあげたパン生地】塩なしパンは伸びがわるい

[配合①]塩なしパン

強力粉 150g
イースト 1g
砂糖 5g
無塩バター 5g
水 100g

[配合②]塩ありパン

強力粉 150g
イースト 1g
塩 3g
砂糖 5g
無塩バター 5g
水100g

上記のような2つのパン生地を機械で12分間捏ねました。

捏ね上げ温度はほぼ同じです。
①塩なしパンが25.1度、②塩ありパンが25.6度。

こね上がりの状態を見てみましょう。

①塩なしパン(捏ね上げ後)
②塩ありパン(捏ね上げ後)
①塩なしパン(グルテンチェック)
②塩ありパン(グルテンチェック)

製パン理論の本を調べると、塩の配合が0%のパンは捏ねる段階からベタついてダレたパン生地になると記載があります。

私が行った配合と条件では、①塩なしのパン生地はベタつくという印象ではなく、ぼそぼそとかたい、繋がりの弱いパン生地になりました。

パン生地を薄く伸ばそうとすると、途中でブチっとパン生地が切れてしまいます。

②塩ありのパン生地のグルテンはしなやかに伸びて、薄く指が透けて見えるのがわかりますね。

この比較でわかるのは、塩がパン生地のグルテンの形成に影響を与えるという事です。

【一次発酵】塩なしパンの発酵は早い

塩の配合が0%の①塩なしパンと、塩を加えた②塩ありパン。
捏ね上げ温度はほぼ同じです。

この2つのパン生地を35度の発酵機で一次発酵させます。

〈50分後〉

①塩なしパン(一次発酵50分)適正
②塩ありパン(一次発酵50分)発酵不足

写真だとわかりにくいのですが、

①塩なしパンの方は50分で適正な発酵状態になりました。

②の塩ありパンは発酵が不足していましたので、10分プラスして60分間一次発酵を取りました。

②塩ありパン(一次発酵60分)適正

フィンガーテストをすると、

①塩なしパンは、弾力と張りがない。とっても柔らかい状態です。

②塩ありパンは適度に張りがあり、柔らかい。ツヤツヤと表面もとても綺麗です。

塩の効果が、ここでもわかります。
塩にはイーストのアルコール発酵を抑えて、発酵時間を遅くする役割があります。

【分割/成形】塩なしパンはダレる・ベタつく扱いにくい生地

一次発酵が終わったパン生地を5つに分割し、ベンチタイムをとってから丸めて成形します。

①塩なしパンは、とても柔らかくて張りがない。捏ね台にもベタベタとくっつきます。

分割する段階から、ブチっブチっと断裂されるような印象があります。
これはグルテンの繋がりが悪いためです。

パン生地を丸めようとすると、グルテンの形成がとても弱いのもよくわかります。
すぐに生地切れを起こしてしまいそうな、弱々しいパン生地です。

成形後のパン生地の表面はザラザラとツヤがなく、見た目にも良い状態ではありません。

①塩なしパン(成形後)

②塩ありパンは、適度に張りがあって扱いやすい。捏ね台に生地がくっついてしまうこともありません。

成形した生地の表面は艶があり、ピンと張りのある丸めを行うことができました。

②塩ありパン(成形後)

分割/成形の比較でも、塩がパン生地のグルテンに影響している事がわかりますね。

【最終発酵/焼成】塩なしパンは焼き色がつかず、焼き上がりの形がゆがむ

最終発酵の時間を比較します。
一次発酵と同じように、塩なしパンの発酵は早いです。これ以上では過発酵になりそうだったので、40分で終了しました。
塩なしパンは発酵40分でも、塩ありパンの50分よりも発酵が進んでしまっています。

①塩なしパンは40分・・・表面はざらざらで、ダレてしまっている。

②塩ありパンは50分・・・表面はツヤがあり、適度な張りがある。適正な状態。

①塩なしパン(最終発酵40分後)
②塩ありパン(最終発酵50分後)

焼成はどちらも200度で10分です。

①塩なしパン(焼成後)
②塩ありパン(焼成後)

おー、、これは大分ひどい状態のパンが焼き上がりました(゚ロ゚)

①塩なしパン・・・焼き色が薄く、パン生地に亀裂が入っている

②塩ありパン・・・焼き色が綺麗についており、まん丸な形。表面もツヤがある。

ここでは、塩の効果として焼き色に影響があることがわかります。

以上のように、塩なしパンと塩ありパンでは作業中から、仕上がりのパンまでで大きな違いがありました。

ここまでの捏ね~焼成までの結果から、パン作りの塩の効果を考察していきましょう!!

パン作りにおける塩の役割はこちらのブログにより詳しく記載しています。良かったら参考にしてくださいね(*^_^*)
【入れ忘れに注意!!】パン作りの塩の役割

【塩の役割①】グルテンの形成を促進する

〈捏ね上がりのパン生地の様子〉
①塩なしパンはぼそぼそとしてかたく、伸びが悪い
②塩ありパンはしなやかに薄く伸びる

〈分割/成形のパン生地の様子〉
①塩なしパンはとても柔らかくだれる。べたついて、扱いにくい。表面はざらざらと荒れる。
②塩ありパンは、適度に張りがある。表面は艶やかで綺麗。

①塩なしパン(成形後)表面はざらざら

これらの結果から考えると、塩はグルテンの形成を促進していると予想できます。


塩にはグルテンの伸展性(伸びの良さ)と抗張力(引っ張り強さ)の両方を高める効果があります。

つまり、塩を加えることでパン生地の弾力が増して引き締まり、伸びも良くなる。

このような、大切な役割が塩にはあるのです。

①塩なしパン(表面が割れている)

塩なしパンは、皮(クラフト)に亀裂が入ってしまいました。

これは、パン生地の伸びが悪いためにおこる現象と考えられます。

オーブンに入れた後、パン生地の伸びが悪いために表面だけが焼き固められてしまいます。
その後にパン生地の中心部まで熱が入り、膨張した上記の逃げ道がなくなるために、パン生地の表面が割けてしまうのです。

この結果、全体の形もゆがんで不格好なパンに焼きあがります。

パンにクープを入れる理由も、これと関係しています。一読すると理解が深まると思いますので、よかったらこちらのブログも参考にしてみてくださいね(*^_^*)
【失敗の原因】パンが横割れ、、クープを入れる意味は??

【塩の役割②】イーストのアルコール発酵を抑えて、発酵時間を遅らせる

一次発酵と最終発酵の両方で、
発酵時間は、塩なしパン <<< 塩ありパンとなります。

塩を加えると発酵時間が長くなる事がわかります。

ここから、塩の効果を考えてみます。

イーストのアルコール発酵を抑える。

これは、一見デメリットのように感じますよね。

パンの発酵時間は短ければ良いというものではありません。
早すぎる発酵はパン生地を傷めてしまいます。

パン生地を良い状態に仕上げるためには、適切な発酵時間を取る必要があります。

パンの発酵時間を適切にコントロールする。

そこにも塩が一役買っているのですね(^^)

また、もうひとつ『焼き色』についても、ここで理解できます。

イーストのアルコール発酵では、パン生地中のブドウ糖や果糖を消費してアルコールと炭酸ガスを発生します。

【アルコール発酵】
ブドウ糖⇒⇒(発酵)⇒⇒アルコール+炭酸ガス(CO2)

塩の配合が0%のパンでは発酵が早く進むため、イーストはパン生地中の糖分をどんどん消費してしまいます。
そのため、オーブンへ入れて焼き上げる頃には、パン生地中の糖分は少なくなっている状態です。

甘めの煮魚が焦げやすいように、糖分の多いものや焼き色がつきやすくなります。

パン生地に残っている糖分の少ない①塩なしパンの焼き色が薄いのは、
塩の発酵への影響を考える事で説明できますね。

【塩の役割③】パンに味をつける

実際に焼きあがった①塩ありパンと②塩ありパンを食べ比べてみます。

①塩なしパン

まーったく味がない(笑)
本当に、、笑ってしまう位に無味です。

塩を入れてないだけですよ。小麦粉も砂糖もバターも入っています。
それなのに、塩以外の素材の味もまったくしないのです。

②塩ありパン

うん、美味しいです。

塩味を特別感じるわけではなく、小麦粉の風味も甘味も感じます。
パンらしい発酵の風味もふんわり香る。そのようなパン生地です。

お料理でもそうですが、ひとつまみの塩だけでぐんと美味しくなる事がありますよね。

塩で素材の味が引き立つ。甘味も感じるようになる。

これはパンにおいても同じなのだと思います。

パン生地の断面も比較してみましょう。

①塩なしパン

キメが粗く、大きい気泡が所々に分散している。

最終発酵が過多になっていたためか、ボリュームは大きい。

②塩ありパン

きめ細かく、均一な気泡が分散している。

塩なしパンは、グルテンが弱いために、膨らんだ気泡を支えるだけの骨格がない状態です。
そのため、支えきれずに壊れた膜で隣同士の気泡がくっついてしまいます。

その結果、大きい気泡と小さい気泡が分散するような内相(クラム)になっていると考えられますね。

パンの気泡についてはこちらのブログに詳し記載しています♪
【パン作りの豆知識】捏ねないパンのなぜ?グルテンが出来る仕組みを考える!

◎まとめ◎パンと塩は切っても切れない強い関係がある!

今回の検証は、正直なところ私自身もとても面白かったです。

パン作りを始めた初心者の頃から、塩の配合量の多さはとても不思議で、
なんでこんなに塩が必要なのだろうと感じていました。

本で塩の役割を学んではいましたが、実際に『塩なしパン』を焼いたのははじめてです。

味つけの面もそうですが、グルテンに与える影響もたった数グラムの塩の効果とは思えない位に大きいものです。

塩分を控えないといけない方もいますので、塩の配合を控えたり、塩の配合を0%にしたパンが求められる事もあると思います。

でも、塩なし(控えめ)パンを作るには、解決しなければならない問題がたくさんあることもよくわかりました。

『塩を控えたパンを食べたい!』の声に対して、簡単に『YES』の返事ができない。
そんな事が今回の検証で身をもってわかったような気がします。

皆さんも、くれぐれも塩の入れ忘れには気をつけてくださいね( ´ ▽ ` )ノ

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参考文献
科学でわかる パンの「なぜ?」
パンづくりのメカニズムとアルゴリズム
パン「こつ」の科学
NEW 調理と理論 第二版
おもしろサイエンス 小麦粉の科学