『本当にイーストのパンは美味しくないの?』イーストへの誤解を解消します

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『イーストよりも天然酵母の方が良いの?』

よく聞かれる質問です。どう思いますか?

パン屋さんで売られているパンはとても美味しいですよね。
それらのパンはイーストを使っていないのでしょうか?

そんな事はないはずです。
レーズン種、りんご種などの様々な自家製パン種を使っているパン屋さんも増えていますが、
イーストを使ったパンを売っているパン屋さんもたくさんあります。

私自身、今は『イーストを用いたパン作り』をお伝えするパン教室の講師となりましたが、
実は私も『イーストのパンは美味しくない』と思っていたことがありました。

私がパン作り初心者の頃、使っていた酵母は白神こだま酵母です。
その頃は白神こだま酵母のパン教室に通っていました。

イーストと白神こだま酵母は酵母自体が違うのですから、味も食感も違うのは当たり前です。
しかし、その頃は『イーストと違う酵母を使っているから美味しい』というような考えを持っていました。

イーストのパンをほとんど作っていない超勉強不足な状態。ツッコミどころはたくさん(^_^;)
その頃の自分に言いたいことはたくさんありますが、、、(苦笑)

今の私は下記のように考えています。

どんな酵母で作るにしても、パン作りの配合と工程が適切なものであり、発酵時間をしっかりる事。そして、オーブンに入れるときにパン生地が最高な状態にあれば美味しいパンが焼きあがる。

そのため、私はイースト、ホシノ酵母やレーズン種など自家製パン種を使うパンのどれもが、
それぞれの美味しさがあると思っています。
家庭でのパン作りにどの酵母を用いるかは、その人の味の好みやライフスタイルに合っているかなどの理由によって使い分ければ良いだろうというのが今の考えです。

このブログを読むことで、パン作りのイーストに対する誤解を解く事ができれば幸いに思います。
なお、この記事は家庭のパン作りの範囲内での考えとしてお読みいただければと思います。

パン作りに使うイーストとは?

【イースト=人工的に作られた】

このようなイメージを持つ方も多いのではないかと思います。

これは大きな勘違いです。
イーストは自然界から見つけ出された酵母のひとつなのです。

イースト:yeast。英語をそのまま読んだものです。
その言葉のイメージなのか、化学物質のような感じがするのかもしれませんね。

yeastを直訳すると【酵母】です。

酵母は微生物のひとつで、人間にとって役立つものが昔から利用されてきました。

醤油や味噌、お酒も酵母の力で作られています。

パン作りも同じです。
人間が微生物というミクロの世界を発見する前から、
発酵という工程を経て様々な食品が作られていました。昔の人たちの知恵はすごいですね。

これらの食品の発酵に用いられている酵母のほとんどは
サッカロイセス・セレヴィシエ種というグループのものです。

分かりやすく言うと、自然界に生きている無数の酵母の中から、
お酒を作るのが得意な子は『醸造』に、パン作りが得意な炭酸ガスをよく発生する子は『製パン』にというように、各分野の優等生の酵母が選ばれているのです。

イーストは工場で作られている?

イーストが工場で作られているといっても、
そもそも、生きている酵母を人工的に一から作ることはできません。

酵母は培養すると増殖していきます。

パン作りで使われるイーストは工場で培養され、酵母自身の力で増殖する事によって工業的に作られています。

自然界でパン作りが得意な優等生の酵母を選んで純粋培養しているのであり、
決して人工的にイーストが作られているわけではないのです。

イーストが使われ始めたのは意外と最近

今やイーストを使ったパン作りは当たり前ですが、イーストの工業的な生産が行われる前までは果物に付着している酵母やお酒などに使われる酵母を用いてパン作りが行われていました。

これら果物などに付着している酵母を培養し、パン作りに使うまでには何日もの時間と多大な手間が必要になります。

パン用の酵母を純粋培養し、発売されるようになったのは19世紀の後半です。
日本では1930年にパン用酵母の製造と販売がはじまりました。

数千年のパン作りの歴史からみれば、イーストによるパン作りはたった100年です。

にも関わらず、世界中でパン用酵母としてイーストが使われているのは、
やはり自家製パン種と比較して安定した発酵力を持つ事。
そして、パン作りにかかる時間を大幅に少なくする事ができるからだと思います。

イーストと天然酵母の違いとは?

イーストも自然界がか発見された酵母なので、天然酵母という言葉自体が何だかしっくりこない感じもします。
ただ、一般的にはイースト以外の酵母を天然酵母という事が多いようです。

イースト、天然酵母などの表示については、社団法人 日本パン技術研究所の見解も参考にしてみてくださいね。
https://www.panstory.jp/pdf/tennenkobohyoji.pdf

果物などに付着した酵母を培養しパン作りに使用するには手間がかかりますし、発酵力も毎回同じようにというわけにはいきません。
しかし、その手間ひまをかけた分、独特の複雑な風味や食感は私たちを魅了します。自家製パン種を使ったパンには、イーストには出せない風味や旨みがあります。

その理由は色々と解明されています。
伝統的に用いられているサワー種やルヴァン種などのパン種の中では、パンを膨らますための酵母以外に乳酸菌が共存している事がわかっています。

乳酸菌が産生する乳酸は、パン生地を酸性にして酸味を出します。
またパン生地が酸性になると、パン生地が柔らかく伸びやすくなります。その結果として、完成したパンの食感もイーストで作ったパンとは別のものになります。
また、パン種の中には酵母と乳酸菌以外にも多くの微生物がいて、それらが醸し出す複雑な風味がパンの美味しさとなって焼きあがるのです。

酵母を培養する時には、レーズンやりんご、小麦やライ麦などの様々なものが原料となります。これらの原料の違いでも、完成するパンの風味はかなり違ってきます。
とても興味深いですよね。

まさに、酵母からパン生地を育てているようなイメージです。
自家製パン種にトリコになってしまう人の気持ちはわかります(笑)

一方で、イーストの誕生で、パン作りに必要な時間は劇的に短くなりました。

使い勝手が良く、便利なイーストは世界中に一気に普及していきます。

ただ、、その反面で、イーストを大量に用いたパン作りが行われていた時代もありました。イーストが普及したことでパンの風味が落ちてしまうという歴史があったのです。

現在のパン屋さんでもイーストを用いたパン作りが一般的に行われていますが、自家製パン種による伝統的な製法も見直されているそうです。

私はパン屋さんで働いたことはないのであくまで想像ですが、パン作りも時代とともに変化し、歴史的に使われている自家製パン種やイーストの特性を活かしたパン作りが行われているのだと思います。


イーストパンが美味しくないというイメージは、このようなパン酵母の歴史も関係しているのかもしれませんね。

イーストのパンは美味しくないの?

イーストパンのイメージはどんなものでしょうか?
◎変な臭いがするから美味しくない

このようなパンが焼きあがった場合、多くは下記の2点に問題があると思います。
①レシピ自体のイーストの量が適正でない
②発酵の工程で過発酵や発酵不足になっている

家庭用のパンのレシピの中には、短時間で作る事を目的としてイーストの量を多く用いているものがあります。

単純に、レシピのイーストの量が多ければ、イースト臭のするパンになります。
イースト臭が強く残るパンは決して美味しいとはいえないのではないでしょうか。

また、イーストでも他の酵母であっても、パン作りの工程自体が上手くできていない場合は、
まさに『美味しくない』パンになってしまいます

パン生地は作る度に、毎回違う顔色をみせます。
それがパン作りの面白さでもありますが、難しいところでもありますね。


そのため、毎回レシピ通りの時間や温度で作業を行ってしまうと、
発酵不足になったり過発酵になったりということがよくあります。

発酵の過程がパン生地を美味しくします。
発酵が適切に行われることは、美味しいパンが焼きあがるには絶対に必要です。

家庭でパンを作り、美味しくないと感じた場合。
レシピ自体に原因がある事もありますし、工程に問題がある事もしばしばあります。

繰り返しますが、イーストであっても、他の酵母であっても、パン作りの工程自体が上手くできていなければ、美味しいパンにはならないのです。


イーストで作られたパンの味というものを、あまり意識して食べることはないと思います。
私自身は自家製パン種で作られたパンとイーストで作られたパンを食べ比べた時に、
これがイーストで作るパンの味かぁと気づかされました。
この時食べたパンのイースト量は決して多いものではありませんし、それ自体は単純に美味しいと感じるパンでした。


イーストで作られたパンには、やはりイーストの特徴がでてきます
それは、香りもそうですし、食感もそうです。

自家製パン種のような複雑な香りはイーストで作るパンにはありません。
しかし、イーストで作るパンの美味しさを自家製パン種で出すこともできないのです。

どんな酵母であっても、適切なパンの配合と工程を経ればパンは美味しく焼きあがります。

パン屋さんのパンは、職人さんの経験と知識の中で考え尽くされたレシピと、
管理された工程を行っているからこそ、美味しいパンを毎日提供することができるのです。

味の好みは人それぞれです。
自家製パン種の複雑な香りが好きという人もいれば、そうでない人もいます。
同じようにイーストで作られたパンの香りが好きという人も、嫌いという人もいます。

一般的に子どもはふわふわのパンが大好きですよね。
誰が食べるかによっても美味しいと思うパンは違うのです。

何が良い悪いではなくて、

食べる人に合わせて、それぞれの酵母の特徴を活かしたパン作りをする事が大切ということだと思います。


また、イーストの量が多すぎると問題となるのが、発酵時間が短くなってしまうことです。
どんどん膨らみますので、気を抜くとすぐに過発酵になります。

発酵時間が短くなるのは、パン生地にとってはあまり良いとはいえないはずです。

発酵時間をしっかり取ることで、パン生地の中に旨みや風味のもととなる物質がたまっていきます。
自家製パン種を用いたパンのような複雑な風味が強くでるわけではありませんが、
イーストで作るパンであっても発酵時間をしっかりとると風味豊かに焼きあがります。

発酵が極端に短いパンは、旨みが少なくなります
また、パン生地の小麦粉の粒に水分が十分に染みこまないうちに、オーブンで焼かれてしまいます。そのため、しっとり感の少ないすぐに固くなってしまうパンになってしまうのです。

イーストパンが美味しくないと感じる場合、味の好みの問題を除いては、
そのレシピ自体を見直す必要があるのではないかと思います。

イーストで小麦の味を活かしたパン作りをする!

イーストの特性を活かすとどのようなパンを焼くことができるのか。
例をひとつ上げたいと思います。

イーストは、良い意味で自家製パン種よりも酸味が少なく
発酵の風味や香りがそれほど強くないパンが焼きあがります。

その特徴を活かすと、小麦粉や他の材料の味をダイレクトに味わうパンを作ることができるのです。

ただし、イースト臭が残るような大量のイーストを使うのはNGです。
イースト臭で小麦本来の美味しさが失われてしまいます。

私がイーストでの長時間低温発酵を行うために冷蔵発酵法の研究をしていた時、
0.1g単位でパンの味や食感の違いを検証したことがあります。

やはり、少なくなるほど小麦の甘みを感じるようになります。
逆にイーストの量が増えるほど、イースト独特のパンの香りが強くなっていきます。

イーストの量が少なくなると、自然と発酵時間は長くなります。
長時間発酵を行うと、下記のようなメリットがあります。

◎小麦のデンプンが分解されて糖類が増え、小麦の甘みを感じるパンになる。
◎小麦由来のタンパク質分解酵素によって、アミノ酸が増えて旨みが増す
◎空気中や材料から混入した、乳酸菌や酢酸菌が有機酸(乳酸・酢酸など)を産生し、パンに複雑な風味を与える。
◎小麦粉の芯の部分まで水分が染み込むため、保水力が増して、パン生地がしっとり仕上がる

いくつか例をあげましたが、詳しくはこちらのブログを参考にして頂ければと思います。
【手作りパンが翌日まで極潤しっとり!】冷蔵発酵(長時間低温発酵)のメリットとは?

このように、少しのイーストで長時間発酵を取ることで、小麦本来の味わいを活かしたパン作りをする事ができます。

イーストの特性を活かしたパンを作ると考える時、イースト臭はできるだけ抑える方が良いと考えています。
イーストの量を控えて、小麦などの他の材料の味を活かす。

イーストでしか作れないパンの美味しさというものもあるはずです。

◎まとめ◎家庭のパン作りで使いやすい!イーストを活かしたパン作りをしよう

イーストを使う事のメリットは、やはりその手軽さだと思います。

毎日パン作りをするわけではないけど、週末はパン作りを楽しみたいというような場合も、
インスタントドライイーストを用いれば手軽にパンを作ることができます。

酵母を起こしてしまうと種が使い切れなくて勿体無いと思うことがありますが、
インスタントドライイーストはそのような事がないのもメリットだと思います。

何回もお話していますが、イーストと自家製パン種で作るパンは味も食感もまったく違います。

◎食べる人はどんな人か?
◎どんな食感や味のパンを作りたいのか?
◎作り手である自分自身の作りやすさはどうか?

上記のような視点で、パン作りの酵母を考えていくと選ぶときの参考になるのではないかと思います。

私はイーストのパンも、自家製パン種のパンのどちらも大好きです。
パン屋さんでも、色々な酵母のパンを食べ歩きして楽しんでいます(^^)
いつも『何の酵母で作られているか?』を考えながら食べてしまう癖があります(笑)

ただ、私が手作りをするのは主にイーストのパンです。
パン教室でもイーストのパン作りを基本としてお伝えしています。

その理由は、日常の好きな時にパンが作れるという手軽さ。
そして、癖のない味がだれにでも好まれるという事。
フィリングや具材の組み合わせて、材料を活かしたパン作りができる事。
安定した発酵力があり、大きな失敗なく作ることができる事があります。

低温長時間発酵、少しのイーストで冷蔵発酵を行うことで、
これらのイーストの特徴を活かしたパン作りを日々考えています。

イーストで作るパンにはさまざまな誤解がありますが、
少しでも良いイメージを持っていただけたら嬉しいです(^^)

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参考資料
天然酵母表示問題に関する見解 社団法人 日本パン技術研究所
パン作りのメカニズムとアルゴリズム
科学でわかるパンの「なぜ?」
パンの世界 基本から最前線まで
藤本章人,井藤隆之,井村聡明:伝統的パン種のおいしさと微生物の関わりについて