パンのレシピの砂糖の量には決まりがあるのでしょうか?
『ほんのり甘めのパンのレシピを作りたい。』
『パン生地だけでしっかり甘さを感じられる方が良いな。』
『甘くないパンが作りたい。』
朝食なのかおやつなのか、、、シチュエーションによって食べたいパン生地が違いますよね。
パンの材料である砂糖は、甘味をつける大元になります。
そして、単に甘さだけでなく、パンの膨らみや食感にも影響します。
砂糖はパンの仕上がりを左右する、とても重要な材料なのです。
パンの種類を考える時、リーンなパン・リッチなパンと表現することがあります。
リーンとは『簡素な』という意味です。
パンの基本材料である小麦粉・イースト・塩・水で作られるものや、他の副材料も少ないシンプルなパンを『リーンなパン』と言います。
バケットやカンパーニュなど、食事と共に食べることの多いパンがこの中に入ります。
一方で、リッチなパンとはその名の通りです。
乳製品や卵、砂糖などの副材料が多く配合されたパンのことを指します。
菓子パンやブリオッシュなどが代表例ですね。
リーンなパンとリッチなパンのレシピの配合は、
それぞれに特徴的な味や食感を出すための秘密が隠されています。
ここで注目するのは砂糖の割合です。
リーンなパンとしてはバケットなどのフランスパン。
リッチなパンの菓子パン。
そして、その2つの間くらいの位置づけとして食パン。
上記のフランスパン・菓子パン・食パンに配合される砂糖の割合から、
それぞれが持つ味や食感の特徴を紐解いていきたいと思います。
尚、砂糖の割合はベーカーズパーセントで考えています。
例えば、砂糖の割合10%と記載した場合は、
小麦粉100gに対して砂糖10gが配合されている事を意味しています。
記載している砂糖の割合の値は、一般的なものとして目安を示しています。
本来レシピに決まりはなく、配合の考え方の一例として読んで頂ければ幸いに思います。
砂糖の役割についてはこちらのブログに紹介しています。一読していただくと、今回のブログ記事の理解が深まる内容になっております(*^_^*)
【パンの材料Q&A】砂糖入りのパンがふわふわ柔らかい理由は?/パン作りの砂糖の役割を詳しく解説します
【砂糖の割合ゼロ】フランスパン
フランスパンといえば、バケット!ですかね。
バケットやブール、バタールなどのフランスパンはとてもシンプルな配合です。
パンの基本材料である、小麦粉・イースト・塩・水の4つの材料で作るシンプルなパンです。
レシピによっては、少量の副材料やモルトパウダーなどが配合されるものもあります。
砂糖の割合はゼロ。
砂糖を配合せずに作るパンの代表選手です。
砂糖はイーストの栄養源のはずなのに、パンは膨らむの?と疑問に思いますよね。
これが大丈夫なのです。
この小麦粉とイーストがもつ神秘のシステムはとても面白いです。
とっても奥が深いので、ここでは説明を省きますが
発酵時間を十分にとることができれば、砂糖不使用のパン生地もきちんと発酵して膨らむのです。
フランスパンの工程では、十分に長い一次発酵時間をとることが多いはずです。
その理由のひとつして、砂糖の配合がゼロであるということが関係しているのです。
詳しくはこちらのブログに記載しています。良かったら参考にしてくださいね♪
砂糖なしでもパンは膨らむのか?/砂糖不使用のフランスパンが発酵する理由
適正量の砂糖が配合されたパン生地は柔らかく伸びが良くなります。
焼き上がりはしっとりふわふわになります。
そして、砂糖の保水性があるために、焼きたてから時間が経ってもパンが固くなりにくくなります。
フランスパンにはその砂糖が含まれていません。
となれば、他の副材料も含まれないフランスパンの生地は非常に伸びが悪いという事になります。
そのため、オーブンの中でふんわりと膨らませるためには工夫が必要になります。
それが、クープとスチーム焼成(蒸気)です。
どちらも、伸びにくいフランスパン生地の膨らみを助け、ふんわりとした食感にするためには
必須の工程です。
【失敗の原因】パンが横割れ、、クープを入れる意味は??
また、時間が経つとパンが固くなりやすいのも特徴のひとつです。
フランスパンの配合から考えれば、これは仕方がないことなのです。
フランスでは、朝から焼きたてのバケットをパン屋さんで購入する生活環境があります。
フランスパンなどの基本材料に近い配合のパンは、
当日食べられないものはすぐに冷凍保管していただくのが良いと思います。
食べたい時に回答して温め直せば、焼きたてに近い食感のフランスパンを楽しむことができるはずです。
【砂糖の割合2~5%】食パン
砂糖の割合が5%くらいまでは、パンとして焼きあがった時にほとんど甘味を感じません。
それなら、何で砂糖を入れるのよ!!
そのような疑問が湧いてくるのは自然だと思います。
食パンのように砂糖の割合が5%くらいまでのパンでは、
砂糖を配合する目的は甘味をつけたいからではないのです。
砂糖を配合する目的は、パンにおける砂糖の効果を理解することで納得出来ると思います。
【砂糖の効果】
①イーストのアルコール発酵の栄養源を作り出し、発酵が安定して進む。
②パン生地が柔らかく伸びやすくなり、ふんわり膨らむ。
③パンが時間が経っても固くなりにくい。
④焼き色がつきやすく、香ばしい風味が加わる
蒸気のような砂糖の効果を狙って、たった数%の砂糖を配合するわけです。
日本人にとっては、食パンは最も身近なパンです。
食パンの食感は軽めでしっとり柔らかいものが、好まれる傾向があると思います。
私の中でも、毎日食べたい食パンはシンプルで
しっとりしたソフトな食感のものがとても体に馴染みます。
また、翌日の朝食用に買う習慣があるので、時間が経っても固くなりにくいというのは、
生活中の食卓パンとしては欠かせない条件ですよね。
そのため、私が基本にしている食パンのレシピも、
約5%の砂糖を配合し、ソフトな食感と日持ちの良さを出すようにしています。
近年高級食パンが流行っていて、食パン=シンプルな食事パンという概念自体がなくなっているかもしれません。
食パン型で焼いたものでも、リッチな配合のものもあります。
それもとても美味しいし、パンの配合には決まりはありません。
このブログでは、一般的に朝食で食べられるような甘味の少ない食パンについてお話しましたので、ご了承くださいね。
【砂糖の割合10%~】菓子パン
砂糖の割合が10%以上になると、パン生地自体を甘いと感じるようになります。
菓子パンという位ですから、食べて甘くないと裏切られた気分になりますよね(笑)
フィリングも甘いものを合わせると思いますので、
バランスを考えてもパン生地にしっかりとした甘さをつけることが多くなると思います。
また、前章でもお話しました通りに、砂糖を配合する事でふんわり柔らかい食感になります。
お菓子のような甘いパンはふわふわで幸せ(^^)
そのイメージ通りのパンを作るための配合が、砂糖の量からも推測できるのです。
ただし、注意しなければならないのが砂糖の上限量です。
砂糖の適正量を超えて配合してしまうと、
イーストの活性が弱まり、むしろ膨らみが悪くなってしまいます。
イーストは生きている細菌です。
快適な環境では、盛んにアルコール発酵を行いますが、
砂糖がとても多い環境は、イーストにとってはとても生きづらく苦しいのです。
例えば、赤色のサフのインスタントドライイーストでは
上限量として砂糖の割合12%と記載されています。
ルサッフル社 サフ インスタントイースト赤⇒https://lesaffre.jp/products/10001700/
しかし、砂糖の配合量が多いパン生地を作りたい!!という事ももちろんあります。
そんな時にしようするのが高糖生地用のインスタントドライイーストを使用します。
金色のサフのインスタントドライイーストは高糖生地用として有名ですね。
砂糖の割合は5%~と記載されており、上限量は明記されていません。
低糖生地用のインスタントドライイーストの上限量である砂糖の割合が12%を超える場合は、高糖生地用を使うと安定して発酵が進むはずです。
ルサッフル社 サフ インスタントイースト金⇒https://lesaffre.jp/products/10003700/
低糖生地用と高糖生地用インスタントドライイーストのメカニズムと使い分けはこちらのブログで紹介しています(^^)
【パンの材料Q&A】砂糖の割合で使い分ける!低糖/高糖生地用インスタントドライイーストとは?
また、菓子パン生地などの砂糖の配合量が多いパンは、仕込み水の量がすくなくなっている事に気がつきます。
これはどういう事なのでしょうか?
砂糖はとても水に溶けやすいという特徴があります。
そして、砂糖が水に溶けると水の量が増加します。
つまり、砂糖の量を増やしたのに、仕込み水の配合をそのままにしてしまうと、
非常にベタつく柔らかいパン生地になってしまいます。
シンプルな配合の食パンなどと比較して、仕込み水の量が少ないレシピを見つけたら、
砂糖や卵、バターなどの副材料に注目してみてください。
きっと、何か気付くことがあると思いますよ。
◎まとめ◎砂糖の割合でパンの味も食感もまったく違うパンになる!
砂糖には甘味をつけるという大切な役割の他に、
パンの食感を柔らかくしたり、パンが固くなるのを防ぐ等の効果があります。
実際には、小麦粉の種類や仕込み水の量、他の副材料の配合量など
様々な要因が重なってひとつのパンが焼きあがっています。
一気に全てを理解しようとするのはとても大変です。
ひとつひとつの材料の特徴を一歩ずつ学んでいくと、
知識が集まった時にグーンと理解が深まります。
糖分はイーストの栄養源でもあるので、イーストへの影響を常に考えつつ配合していく事になりますね。
生きているイーストを扱いますので、そこが奥深くて面白いところでもありますね(^^)
皆さんのパン作りの手助けになれば嬉しいです♪
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参考資料
科学でわかるパンの「なぜ?」
ルサッフル社ホームページ